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2012-07-19 22:05

(連載)内向き、縮み指向では未来は拓けない(1)

鈴木 馨祐  前衆議院議員
 私の選挙区である神奈川県の港北区や都筑区でも、この前の週末くらいから夏祭りや盆踊りが各所で始まりました。町会ごと、谷戸ごとに行われていますが、新しい街という性質からか、8月のお盆の時期にはほとんどなく、その前後に分散しているのも興味深いところです。その他いろいろな活動でバタバタしていますが、そんな中でふと気になったことをここで少し書かせていただきたいと思います。それは、最近の自民党の一部をはじめとした政治全体において、政策というかマインドがあまりにも内向き思考になってしまっているのではないかという点です。例えば、「国土強靭化」という名の大規模公共事業の問題。この論拠は、デフレ下では需要が足りていないのだから、100兆円でも200兆円でも公共事業をしてその需要を創りだすことが今の政治がやらねばならない最大のことだ、ということのようです。

 しかし、今の日本は鎖国をしているわけではなく、グローバル経済の一角という厳然たる「事実」を忘れるわけにはいきません。そのような状況下で、需要創出を内需のみ、しかも公需で賄うべきだという議論は若干乱暴な気がします。実際、過去公共事業等の財政出動をしたケースはあまり成功していません。日本の人口が減少し、高齢化が進んでいる環境下では、当然内需はこれからも落ち込んでいく可能性が高いのはやむを得ません。放っておけばデフレの改善は難しい。むしろ、どうやって成長著しいアジアをはじめとした海外の需要を取り込むかが、デフレ対策、経済成長を考える上での必須条件ではないでしょうか。

 実際、ミクロの議論になりますが、デフレのうちの一つの事象である個々の商品の価格の低下圧力は、需要を国際的に引き出せている国際競争力のある商品においてはあまり現れていません。また資産デフレということを考えても、海外からの投資をどう呼び込むかは避けられない問題です。アメリカにおいて住宅価格が高下しながらも長期的には上昇トレンドにあるのは、移民をはじめとして依然として人口が増加しているから、というのは否定出来ない現実です。

 もちろん、過去に創ったインフラが老朽化してきているそのメンテナンスはキチンと行っていくべきですし、必要最低限のものの整備は必要でしょうが、10年間で200兆円というような公共事業、しかもその多くが道路をはじめとする一般社会資本整備というのは明らかに間違った方向性と考えざるをえません。むしろ今政治が打ち出すべきは、世界で勝負出来る大企業、中小企業、零細企業のイノベーションを促進出来るような規制改革、投資、減税、制度づくりであり、もっと外向きの経済成長戦略を志向せねばならないはずです。同じような「内向き指向」の問題はあちこちに見られていて、例えば最近話題になっている日本航空の再建・再上場問題でも、なぜ再生が必要だったかという「公共財」の意義付けが内向きの議論に一方的にねじ曲げられてしまっています。(つづく)
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