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2012-06-12 10:05

民主主義に「恥」の概念は無縁

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 アサド大統領が人権を説き、金将軍様が民主主義を説いたら一体我々はどう反応するか。さすがに分をわきまえているというか、そんなことは起こりえないのだが、似たようなことが「先進国」では起こったりするから厄介だ。小沢さんが野田さんの政策に反対な理由は、それを「国民が望まない」からであり、マニフェスト軽視は「国民に対する」背信行為であって、だから反旗を翻すのだと仰らんばかりである。このかたの座標軸の中にいつから「国民」の目線が入ることになったのか、まこと理解に苦しむものがある。

 何億円というお金の出所が昨日と今日でころりと変ったり、そもそも億円程度のオカネは些細な出来事であって天下国家に関わっている自分には与り知らぬことだ、という言明を一体「国民」がどう受け止めたと思っていらっしゃるのだろう。これほど鉄面皮に強弁のタネを主張して憚らないというのは、これこそ民主主義政治家の特権というべきか。そもそも自分の言説に就いて恥を知らないという手合いにはつける薬はありそうにない。事は政治家に限らず、道聴途説くらいは可愛いとして、言説の無断借用、信念不在の巧言から始まって、売文、売論が身過ぎ世過ぎになってからというものこのテの論説が巷にあふれかえっている。それを個人のレベルで目利きするのは多少なりと教養ある人間に取ってはさして難しいことではないが、これを重用する世の風潮には抗する術もない、というのがありようではないか。

 世に言う御用学者の大半もこの範疇に属するし、中で最も始末に悪いのがあたかも全く気がついていない風情での論説の主張だ。内心忸怩たるものがあってのことならば他日の修正も期待は出来ようと言うものだが、確信犯ともなるとその期待もあり得ないことになる。そもそも民主主義に「恥」の概念は無縁である。それを補完し、補正するところに東洋の哲学の存在意義があった筈だ。それが御本家の中国があの有様では衣鉢を継ぐものは日本しかない筈ではないか。幸い庶民の間にはまだこの倫理は健在だと観てよいだろう。9.11の後に大規模なルーティングや暴力行が発生したとは聴かない。してみるとこれは永田町一体にのみ観察される事象なのだろうか。

 闘病生活で杖が手放せなくなってから、無数の人々が公共交通機関で座席を譲って下さる。が、それを同じくらいの数の人々が無関心であったり、子供を先に駆け込ませて席を確保したり、車中で誰憚ることなく飲食を楽しんだりしてもいる。どちらの反面も日本人であってみれば、軽々な速断は慎むべきなのかもしれない。国民国民と良い募る政治家がどれほど国民のことを考えているのかも同断であるとよいのだが。
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