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2012-04-02 10:28

中国の東欧政策

岡崎研究所  シンクタンク
 The Diplomat2月25日付でStephen J. Blank米国陸軍大学戦略研究所教授が、中国はウクライナ、ベラルーシ、モルドヴァ等に対して外交・経済攻勢を強めている、と指摘しています。すなわち、あまり注目されていないが、中国は首脳の訪問や融資の提供等によって、ウクライナ、ベラルーシ、モルドヴァ等の「東欧」諸国との経済外交を強化しており、中国のプレゼンスは東欧でも高まっている、これによってロシアからの武器輸出が減る中、中国は旧ソ連時代に主要な兵器生産地だったウクライナから先端兵器・技術を輸入できるようになる。また、現在建設中の中国と欧州を結ぶ大陸横断鉄道は、ウクライナかロシアを通ることになるが、高圧的なロシアよりウクライナの方がパートナーとして扱いやすい。さらに、ベラルーシには中国の通信設備を輸出し、そこから東欧全体に普及させることを期待できる、しかし、こうした中国の動きは、通商上の利益だけを狙ったものではなく、政治的影響力の拡大や中国的価値観への支持増大を狙った、中国のグローバルな外交の一環と言える。ただ、これは、東欧を伝統的な勢力圏と見做してきたロシアとの間で、摩擦を生む可能性がある、と言っています。

 確かに、近年、中国の東欧への経済攻勢が目立ちますが、この論説が言うような「隠された狙い」、一貫した戦略が中国にあるのか、またあったとしても、カネの力だけで(中国はこの地域の安全保障にはほとんど貢献できない)どこまで東欧諸国の支持を確保できるのかは不明です。また、ウクライナとベラルーシについては、共にEUの支持を――ウクライナはチモシェンコ前首相の投獄、ベラルーシは2010年12月大統領選挙での強権的手法をきっかけに――失う中で、ロシアの「経済力」に組み敷かれつつあります。従って、両国への中国の攻勢は、一時休止の段階にあると言えます。

 また、ロシアは、カザフスタンやベラルーシとの関税同盟をキルギスやタジキスタンにも拡大しようとしており、それが実現すれば、キルギスはロシアからの援助への依存度を高めることになるでしょう。従って、東欧諸国に対する中国の影響力は、この論説のように「ある」と言えばあるという、相対的なものと言えます。他方、東欧諸国の方は、中国を当て馬とし利用しようとするでしょうが、それ以上のものにはならないでしょう。ウクライナの兵器を除いて、これらの国から中国に輸出できるものがほとんどないことを考えると、経済関係の発展にも限界があると思われます。また、東欧をめぐってロシアと中国の間の摩擦が深刻になるということもないでしょう。中ロ双方が関係悪化を望んでいないからです。
 
 それにしても、ロシア周辺の小国に対して手厚い外交を展開するというのは、かつての日本外交の柱の一つでしたが、今はそれを中国が行っています。中国のように首脳レベルが身軽に外国を訪問できないのであれば、それに代わる体制を整備すべきでしょう。さらに、中国のように見境なく資金をばらまく必要はありませんが、円借款も含めていくつか目玉となる案件を常に一つか二つ各地域向けに用意して、中小国の関心を繋ぎ止めていくことは、可能ですし、必要でもあるでしょう。
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