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2012-03-22 05:34

(連載)北朝鮮の衛星発射実験通告の意図と我が国の対応(1)

高峰 康修  日本国際フォーラム客員主任研究員
 北朝鮮が、4月15日の金日成生誕100周年に合わせて、人工衛星の打ち上げを実施すると通告している。これは、いうまでもなく、金正恩に権威づけを行い、金正恩を推戴する先軍政治の体制を固めることを意図している。それ以外の要素は付随的なものといっても過言ではないように思われる。
 
 2月29日に米朝間で、北朝鮮はウラン濃縮を停止し、それに対して米国は食糧支援を行うことで概ね合意していたが、北朝鮮の衛星発射通告は、これを反古にするものである。この米朝合意からわずか半月で、北朝鮮が衛星発射を通告したことは、北朝鮮が前々からそういう計画を立てていたことの証左である。昨年12月に金正日総書記が死去した際には、4月15日ごろに何か動きがあるのではないかとの観測が専らであった。

 さらに、北朝鮮の指導部は、そもそも食糧援助の必要性を感じていないと推測される。米国は食糧援助を停止するであろうが、わざわざこのように早く、米国のメンツを潰すような発表を行うことは、それ自体、金正恩の対米強硬姿勢をアピールして、その権威を高める一環であるように思われる。米国が米朝交渉というオプションを当面完全に捨て去ってしまわない限り、米国は北朝鮮に欺かれ続けるであろう。

 北朝鮮の衛星発射実験は、当然「北朝鮮に対し、いかなる核実験又は弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求する」とした、国連安保理決議1874に違反する。衛星の打ち上げは弾道ミサイル技術の使用そのものだからである。北朝鮮は、宇宙空間の平和的利用の権利があると言っているが、安保理決議1874はそれを認めないとしているのだから、北朝鮮の主張には理由がない。ただ、こうした正論もさることながら、北朝鮮の衛星発射実験計画には、注意深い計算が見て取れる。すなわち、国際社会の批判を最小に抑えることと、金正恩体制強化の両立である。(つづく)
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