国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-03-04 12:17

(連載)自民の憲法改正原案における安全保障関連条項への論評(1)

高峰 康修  日本国際フォーラム客員主任研究員
 自民党は、サンフランシスコ平和条約発行60周年にあたる4月28日までに憲法改正の成案をまとめ、国会に提出する方針である。それに先立ち、憲法改正第二次原案(第一次原案は2005年に発表)を公表している。憲法改正においては、数多くの論点があることは間違いないが、やはり、中核となるのは、何をおいても安全保障に関わることである。そこで、今回の第二次原案について、安全保障関連条項に焦点を絞って論評したい。具体的には、(1)緊急事態条項の新設、(2)自衛軍の保持、(3)自衛権、である。

 まず、緊急事態条項は、「内閣総理大臣は、わが国に対する外部からの武力攻撃、テロリズムによる社会秩序の混乱、大規模な自然災害その他の際、緊急事態を宣言できる」旨、明記された。そして、緊急事態が宣言された際には、法律と同等の効力を有する政令を制定することができ、地方自治体の首長への内閣総理大臣の指示が可能になる。憲法の窮極的な目標は、国民を護ることである。緊急事態条項は、有事、大災害といった事態に際して、迅速な対応を法制面からサポートし、もって、国民保護に資するものである。それゆえ、緊急事態条項のない憲法というのは、欠陥品といっても過言ではない。緊急事態条項の意義は、かかる事態にあっても、超法規的措置をとらざるをえなくなるようなことを防ぎ、国民の権利が恣意的かつ必要以上に制限されることのないようにするという点にもある。それゆえ、緊急事態条項の新設は、当然のこととはいえ、大いに歓迎したい。

 次に、自衛軍の保持に関してである。これは、2005年の第一次原案を踏襲するものだが、自衛軍の保持、最高指揮権が内閣総理大臣にあること、「軍法会議」の設置などが柱となる。とりわけ注目すべきは、「審判所」という名で「軍法会議」に相当する機関を設置することとしている点である。軍法会議あるいは軍事裁判所は、軍隊を真の軍隊たらしめるのに不可欠な組織である。国際法上、軍人と文民の取り扱いは截然と区別されており、軍法会議は軍人に対して軍刑法を適用する機関である。

 軍刑法および軍法会議の存在は、軍人に軍事規律を遵守させ軍紀を高める機能を有するのみならず、捕虜虐待などの戦時国際法違反を抑止することで、我が国の軍人が戦犯となることを防ぐ効果がある。「軍法会議」の設置は当然のことだが、軍刑法の制定とセットでなければならない。マスコミ・有識者などの論調を見ていると、この点の理解があまり進んでいるようには思われない。今後、自民党は、軍隊・軍法会議・軍刑法が点セットであることを、先頭に立って国民に周知していくべきである。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会