国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-02-02 17:59

法律で国歌・国旗と定められている日の丸・君が代

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 警察と刑務所が少し規律の上で問題がある、というのが話題になっていたが、ことは行政や立法だけではなく、司法についても少しおかしいのではないか、という判決が最高裁小法廷で出た。お馴染みの日の丸・君が代反対という日教組肝いりの先生たちの話だ。停職や減給等の「厳罰」については、相当の配慮が必要だという趣旨で、重きに過ぎる何人かについて処分取り消し、という判決だから一見もっとも至極のように聴こえる。のみならず三権分立の建前からして、行政罰が安易に拡大・加重されるのは好ましくない、という言い分もそれなりに納得させるものはある。しかし、問題はそれ以前のところにありはしないか。

 日の丸・君が代は法律で国歌・国旗と定められている。(それがどうした。悪法は法ではない、という議論には触れない。悪法かどうかを個人が決めて良い、ということになれば、その反動もあることを指摘するに留める)そして国歌・国旗に対して応分の敬意をもって接する、というのは世界の常識だ。教育現場は言うに及ばず、およそ公共の場所においてそれに背いた行動をとれば、現在の政治体制、あるいは国家そのものに対する抗議あるいは敵意の表明と受け取られるのもこれまた常識に属する。その抗議の意思表明が思想信条に基づくもの(日の丸・君が代が軍国主義の象徴だと思い込む。これが思想信条だと仮定しての話だが)だから配慮を加える必要がある、というのが最高裁の意見のようだ。思想信条に基づかない抗議等というものが存在するかどうか詳らかにしないが、おっしゃりたいのは単に交通規則に抵触した、怠惰で職務をさぼった、というのとは違う、ということでもあろうか。

 法益の比較較量で言うならば、児童の眼の前で国歌・国旗に敬意等払わなくて良い、自ら正しいと思えば法律などは破っても良い、という実例を見せることの害よりも、教員個々人が政治的信条に忠実であることを保護する法益の方が大きいということになろうか。今回の原告団の行動がどれほど日教組の活動であるのかないのかについては明らかでないから論及しない。経済的不利益に対して日教組が直接補償、あるいは義援活動などによって救済するかどうかも不明だ。しかし、原告は二年に三回しか処分歴がなかろうが、一回に留まっていようが、自らの行動について確信犯と言える信念(信条?)をお持ちの方々であるのはほぼ疑いのないところだ。であるとすれば、処分が重きに過ぎる、というのはタテマエの議論であって、心は教育委員会の処分そのものに対する異議申し立てである、と理解すべきだろう。

 浮世離れして教育現場をご存じない裁判官のご判断かと思いきや、娑婆の様子を良くご存知の筈の弁護士、お役人出身の判事の方がより強硬なご意見をお持ちなのにも驚いた。行政罰がやたら加重の方向に一人歩きするのは好ましいことではない。しかし、公務員の遵法精神が真正面から否定されるのももっと好ましくない事態ではなかろうか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会