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2012-01-21 00:17

(連載)ライス氏のカゲキな回顧録(2)

高畑 昭男  ジャーナリスト
 中東和平では、イスラエルのオルメルト首相がライス氏を呼び出して、大胆な極秘和平構想案をもちかけ、パレスチナ自治政府のアッバス代表との間の取り持ちをしてくれるように求めた秘話が明かされている。ライス氏は初め驚き、興奮しながら、中東和平の打開策とするために任期の最後まで、オルメルト構想の実現に尽力したが、イスラエルのリブニ外相は「この人(首相)は国内の支持を失っている」と、実現性をあてにしないよう求めたという。

 回顧録を読む限り、万事歯切れのいいライス氏ではあるが、心残りの点もある。日本でも問題になった北朝鮮に対するテロ支援国指定解除(08年10月)に至る決断だ。ライス氏は大統領にも掛け合って、部下のヒル国務次官補(6カ国協議首席代表)に核問題で広い交渉権限を与え、何とか核放棄の実現に持ち込もうとする意欲満々だった。

 結果的には、北に欺かれてテロ支援国指定解除や重油支援などの利益をタダ取りされた形で終わった。当時、日本政府は、そうならないように散々いさめたものだったが、この結果についてライス氏は全体として残念な結果としかみていないようだ。この問題でチェイニー氏は自らの回顧録の中で、ライス氏が実体を欠いた話に乗せられてしまい、核放棄や不拡散を後退させたとして厳しく批判している。日本から見ても、この点ではチェイニー氏の評価に軍配を上げたい。

 このように、チェイニー氏とライス氏は現役時代にも外交安保政策でしばしば激しく対立し、回顧録でも論争が続いている。それでも私が言いたいのは、自らの仕事の結果を率直に世に公開し、歴史と国民に評価を委ねる姿勢だ。その点では両氏ともに評価に値する。ライス氏は、小泉純一郎政権以後の日本が自信を失い、頼れるパートナーでなくなったとして「訪日が憂うつになった」とも書いている。思えば、日本では5年間に6人もの首相が入れ替わり、あまたの外相が立っては消える日々が続いてきた。首相ももちろんのことだが、最近の日本の外相たちに果たしてまともな回顧録が書けるのだろうかと思うと、何とも空しくなる。(おわり)
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