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2011-12-27 09:47

既得権益構造への回帰が明らかな野田政権

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 「友愛」とか「東アジア共同体」さらには「最低不幸社会」などと、内容が判然としない大風呂敷あるいはキャッチフレーズの類いを口走ることの多かった前任総理お二人とは異なり、一体何がなさりたいのか、大きな構図のようなものがほとんど見えない、というのが特徴の野田政権ではある。その反面、消費税は上げる、公共投資はなし崩しにもとに戻す、痛みを伴う改革は後回し、と「位置エネルギー」の体現については全くぶれないで着実に歩を進める。この政権運営が意図的なものであるのか、それとも抗し難い「空気」あるいは「流れ」の様なもののなせる業なのか。あるいは単に周りの官僚諸氏のいうがままの舵取りなのか。

 ひとつはっきりしていることは、一旦は決別を宣言した既得権益構造への限りなき回帰が明らかだ、という点だろう。それが野田首相自身の意図であり選択であるか否かは大した問題ではない。というのも、官僚機構が既得権益擁護、守旧の砦と化してしまっている現在、政治指導者が進んでそれの旗ふり役を勤めているのか、心ならずもそうする羽目になってしまったのか、はどうでもよいからだ。問題は政治指導者の意図がどこにあるか、あったかではなく、あれほどの期待と支持を集めた政治主導、脱官僚、脱既得権益路線が、その実現に当たって、信じ難いほど幼稚な解釈に基づいてこれまた考えられないほどの愚かな過ちを犯した指導者が二代続いたことによって、かくも簡単に風化してしまう、という構造的な欠陥にある。

 打倒すべき当面の敵が共通であるからといって結束した同志が、いざ打倒してみると敵以外の共通項を見出し損ねて四分五裂、というのはそんなに珍しいことではない。「アラブの春」後のエジプトを始めとする諸国にもその典型例を認めることが出来る。民主党もそのきらいは多いにあるのだが、ことが政策、路線を巡る対立というよりは、小沢一郎氏の政治手法やスタイルに関する好き嫌いを巡っての対立、という色彩が濃厚で、ために政策手法の差異はあたかも後付けの理屈、という観を呈している。

 ひところ選挙の公約、というのは守られないものの代名詞とされたものだ。だから、タテマエ論議を別にすれば、額面通りマニフェストなるものが実施される、すべきだ、と本気で考えていた人はほとんどいないだろう。だから、あれはダメ、これもダメ、はあるにしても、一体核心部分(余り好きな表現ではないが「きも」の部分)はどれか、という認識の問題になる。そこがぶれてしまったのでは、鷺を鴉といいくるめるくらいは雑作もない官僚作文に絡めとられてしまうのは見え見えだといってよい。八ツ場ダム建設の必然性などという国交省の作文をいまさら振りかざしているようではお里が知れた。
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