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2011-11-02 06:53

自公早期解散戦略で足並み一致

杉浦 正章  政治評論家
 第3次補正予算案の衆院通過のめどが立ち、大震災が仲立ちとなった民主・自民・公明の3党協調路線は一転して対立段階へと突入する流れとなった。代表質問でも自民党総裁・谷垣禎一が早期解散を要求したのに引き続き、公明党幹事長代行・斉藤鉄夫が首相・野田佳彦を厳しく批判して解散を求め、自公の足並みが政局対応で完全にそろった。自公は来年の通常国会における消費税率引き上げ準備法案の提出段階での解散を要求。これに対して野田は税率引き上げ実施前の13年8月の任期満了選挙を想定、解散綱引きが展開する状況となった。

 1日までの本会議の論戦で目立ったのは、普段は温厚な斉藤の追及の激しさだった。野田が一人称の主語を使わず、「私たち」とか「各党共に」などと複数を主語にすることを指摘、「自分が主体となることを避けている。政治家として違和感を覚える」とまで言いきった。「心からの憤りを感ずる」とも述べ「消費税法案を提出した段階で信を問うのが筋だ」と主張する斉藤の口ぶりからは、明らかに公明党が早期の衆院解散・総選挙路線にかじを切り、戦闘モードに入ったことを物語る。もちろん幹部の意見は統一されている。代表・山口那津男も「首相が代わってもう3人目。マニフェストも消しては書き直し、消しては書き直し。海図があってなきが如しの船長に本当に日本の行く末を任せておけるのか。目標を示し、国民に信を問うて出直すべきだという声が起こるのも当然だ」と早期解散を求めている。幹事長・井上義久も「消費増税を法律で担保するなら、そのこと自体で信を問うべきだ」と主張している。
 
 一方で谷垣も代表質問で「マニフェストの破たんと国民の信を受けないままの首相たらい回しによって、この政権は正統性が欠如している。解散・総選挙で国民との再契約を行うべきだ」と、公明党と同一歩調だ。両党党首らは先月26日夜の会合で、完全に意気投合し、「早期解散達成」の“攻守同盟”が出来上がったといわれている。自公が早期解散で一致した背景には、自民党側には、落選組からの早期解散の突き上げが強く、もたもたしていると谷垣自身の責任まで問われかねない状況にあること。公明党側には、野田に衆参ダブル選挙に持ち込まれれば、小政党にとって不利に働くという危機感がある。おまけに13年は都議会選挙もあり、トリプル選挙となれば、支持団体の創価学会が3重の股裂きに遭って、効率的な選挙が出来なくなる。自公両党の選挙協力もトリプル選挙では困難となるのだ。長年の選挙協力で出来上がった自公関係を軸に党勢の回復を図りたい思惑が両党にある。両党の戦略は、まず第1に今国会では早期に第3次補正予算案を片づけ、解散・総選挙へのフリーハンドを確保したい点にある。早くも10日の衆院通過で民主党と一致したのもそれが理由だ。補正予算成立後は消費者担当相・山岡賢次のマルチ献金問題などを追及、参院で問責決議案を可決して政権を追い込む方針だ。山岡が居座っても、緊張感を通常国会に継続することが出来ることが重要なポイントだ。自公は消費税法案提出前後の解散を要求しているが、野田は「税率引き上げを実施する前には総選挙で民意を問う」と、法案の成立時期にはこだわらず、あくまで引き上げ実施前の選挙に固執している。

 その実施時期については、政局がらみであるだけに野田はあいまいにしている。しかし、政府部内では社会保障と税の一体改革案で決まった「2010年代半ばまで段階的に10%まで引き上げる」との方針に基づき、13年度に3%、15年度に2%の引き上げの方向が内々固まりつつある。従って野田の発言の狙いは3%上げる前の任期満了選挙にあるのだろう。これが意味するところは来年の通常国会の解散か、13年8月の任期満了選挙かの綱引きに他ならない。しかし野田は任期満了選挙が、三木武夫の例に見られるように追い込まれる選挙の特質をもち、敗北につながることをまだ知らない。ましてや消費税をテーマとしては大敗不可避と言ってもよい。あい路を見出すには、今後少しでもチャンスがあれば解散に打って出るしかないのだ。その因果関係が分かれば、政局は一挙に流動化するかも知れない。いずれにせよ野田の解散回避路線と、自公一致の早期解散戦略が通常国会冒頭から激突することになる。
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