国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-10-24 11:23

これでよいのか?日本の平和主義、民主主義

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 一世の梟雄、カダフィが無惨な死を遂げた。ユーチューブに流れた画面などから察するに、最後はリンチ同然の状態であったと思われる。カダフィの最後のみならず、リビアの政変を一連の「アラブの春」と同日に論ずることにいささかのためらいがあるとすれば、最後にNATOの軍事介入があり、直接的にはそれが体制崩壊の引き金を引いた、ということだろうか。自国民に傭兵とはいえ、軍隊の銃口を向ける愚行さえしなければ、NATOも軍事介入にまで踏み切ったかどうか。歴史に「たら」とか「れば」は禁物だが、最後の最後まで地上軍の投入には否定的であった諸国の反応を見ていると、そんな思いがちらと脳裏をかすめたりする。

 国家の経済的利害をためらうことなくむき出しにしてカダフィにすり寄ったり、カダフィ後の利権保全に走ったり、そんな「帝国主義」的な諸国の立ち居振る舞いを見ていると、日本という国は、とことん違うんだな、と思う。資源獲得になりふりかまわなかった第二次大戦時と、これが同じ国かと思うくらいの変わりようだ。反省しました、ゴメンナサイというだけではなさそうだ。ひとつには米国の占領政策が日本人が潜在的に持っている被虐的な性向と絶妙にマッチして、武力行使とか軍事力というものは、真面目に思考対象にしなくとも、どこかでだれかが考えてくれている、という世界観が抜き難い信仰もかくや、というほどに定着した。要するにドスの利いた外交は禁じ手になった。

 第二に、民主主義についての「劇画的」解釈が定着する。つまり、結果の平等こそが志向すべき理想郷だとされる。かといって、貧しくとも平等に、という覚悟がある訳でもない。豊かで、かつ平等に、という贅沢な理想こそが求めるものであるべきだとされる。(そもそも贅沢でもない理想などと言うのは求めるに値しないではないか。)この両者はもちろん同根で、みんなが仲良く平和なら、それが一番の理想郷ではないか、というに尽きる。

 これが行き着くところは明らかで、教育とか、訓練というものが全て糖衣をかぶせられ、口当たりの良いものだけしか摂取されない。結果の平等が保証されているのならば、努力の価値を説くのはよほどの変わり者に過ぎないからだ。それでも、先人が蓄積しておいてくれた遺産の食い潰しでなんとか21世紀まではたどり着いた、というのが真相に近いのではないか。だから、既存のモデルがそれぞれに行き詰まり、世界が代替パラダイムを求めているという、日本にとってこのうえない機会に、世界の思想を先導する能力もなければ意欲さえない、という有様に成り果てた。もちろんそれはそれで結構だが、結構でないのは、そんな情けない状態にあるという自己認識さえない、ということのほうだろう。カダフィの末路がとんだ落としどころに飛んだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会