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2011-10-15 09:41

(連載)日米同盟の深化と平和国家は両立するか?(2)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 憲法9条には戦中の軍国主義からの脱却という歴史的な意義はあった。しかし戦後と今では国際情勢が変わったので、もはやその政治的な役割を終えてしまった。そもそも国防政策が憲法で規定されるものなのだろうか?国家の政策とは時の政権と議会のやり取りできまる。例えば経済政策において、自由市場を重視するか福祉国家を重視するかを憲法で規定することはあり得ない。憲法とは国家統治のあり方と人権の保護について規定するもので、個々の政策を決めるものではない。こうした観点からも平和国家は再考されねばならいと私は考える。

 最後に平和国家の是非を考えるうえで、私は一つの仮説を唱えたい。最近のメディアや世論で政治家の質が劣化したとよく言われるが、その原因は日本の政治家達が「政策としての戦争」を長年にわたって考えることができなかったからではないか?戦争について何も考えられない政治家を本物の政治家とは思えない。アリストテレス、プラトン、孫子、孔子、からクラウゼビッツに至るまでの古今東西の賢人達は、戦争を国家にとって究極の政策課題と論じてきた。それを端的に示すのが、軍事技術が高度に専門化していなかった近代初頭までは、世界各地の君主達は自ら戦場に赴き、馬上から戦争の指揮を執っていたということである。戦争はこれほどまでに国家の重要課題なのである。それについて何も考えることができない政治家に国家の命運を委ねられるだろうか?

 戦争は強大な破壊力を伴い、その行使には高い見識と倫理感が求められる。この件を考えるうえで、私は江戸時代の武士について言及したい。彼らは支配階級として帯刀の特権が認められたが、刀の殺傷力が強大であるが故に巨大な力ゆえに百姓町人へむやみなやたら抜刀は抑えられた。武士同士でも同様である。彼らには自らの力に対する畏れがあった。「政策としての戦争」を考えることを放棄した政治家に、こうした「謙虚さと責任感」を期待できるだろうか? もちろん、政治家の質に関しては、あくまで私の仮説である。この議論にはさらに強い裏づけが必要である。

 以上より、日本が過去への悔恨に浸る平和国家であり続けることには疑問を抱く。むしろ「政策としての戦争」をしっかり考えることが重要ではないだろうか?こうした「未来志向」の態度を示すことが、日米同盟の深化にも国際社会での信頼の強化にもつながると思われる。拙稿の議論に諸兄よりのご意見を伺えれば、幸甚である。(おわり)
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