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2011-09-28 11:29

小沢は辞職も喚問も馬耳東風だ

杉浦 正章  政治評論家
 首相・野田佳彦は、歯切れが悪いを通り越して、腫れ物に触るような予算委答弁を繰り返した。代表選前に小沢一郎を「小沢先生は依然として政局の中心にいる。希有(けう)な存在であり、政治力量のすごい方だ」と“賛美”したポジションを一歩も出ていない。多くの国民が「党内バランスのみを重視し、世論を無視している」と失望したに違いない。自公両党は、小沢の証人喚問、石川知裕の議員辞職を迫る構えだが、両方とも実現は困難だろう。かくなる上は、「政治とカネ」の追及を主軸に据えて政権のイメージダウンを図り、早期解散・総選挙での決着を図るしかあるまい。

 小沢の秘書3人の有罪判決を受けた予算委質疑は、自民党政調会長・石破茂の追及が見事であった。理詰めで野田の「親小沢ぶり」を浮き彫りにさせた。野田は、小沢の説明責任について、世論調査で7~8割が「説明責任を果たしていない」と回答していることを無視した。「記者会見などを通じて、折につけて説明はされてきた」と述べたのだ。さすがに紳士的だった石破も「国会に対する侮蔑」と声を荒げた。野田は判決への自らのコメントについても「来月にも小沢氏への裁判が始まる。司法への影響も考えると、よく検討しなければいけない」と避け、小沢の国会招致を「政党間の話し合いで決めること」と述べたが、これは政治家の言葉ではなく、官僚の作文そのままだ。要するに、判決によって「脱小沢」など考慮せず、むしろ「親小沢」を選択したのだ。これは「政治とカネ」の問題に関しては、菅よりはるかに後退している。石破は「ノーサイドというのは、小沢氏の側に立つことか」と嘆いたが、まさにその通りだ。

 その小沢本人は、やはり馬耳東風の対応だ。小沢のコメントは「あんな馬鹿な判決はない」。まさにどこ吹く風だ。弁護士とも協議しているが、弁護士らは自らの保身と裁判に負けた腹いせで、判決がいかに馬鹿げているかを小沢に吹き込んだに違いない。一番度し難いのは、小沢チルドレンらの反応だ。約20人が9月27日、「一方的な心証だけで判決が出たことは、基本的人権を無視した国民への挑戦」との認識で一致したという。何が「基本的人権」なのだろうか。限りなく贈収賄事件に近い問題であることを理解出来ていない。どっぷりと石破の言う「政治は力、力は数、数はカネ」の小沢論理に首まで漬かっているのだ。

 自公両党は石川に対する議員辞職決議案を上程する構えだ。しかし同決議は法的拘束力がないため、議員個人に自発的な辞職を求めることしかできない。1997年にオレンジ共済組合事件で起訴された友部達夫が決議に応じなかったのを皮切りに、合計4人の決議対象者が居座っている。今回も同じだろう。だいいち民主党多数で可決自体が困難だ。ましてや、小沢を議員辞職させることなどもっと難しい。先例としては加藤紘一が2002年、事務所代表の秘書による所得税法違反の責任を取って自民党を離党、衆議院議員を辞職しているが、3倍の3人有罪でも、小沢が大人しく離党・辞任することはあり得ない。証人喚問も、政倫審出席も、小沢は「裁判が始まっており、被告席で述べる」として応じないだろう。
 
 要するに、野党は追及前から行き詰まっているのである。そのうち公明党が「政治とカネ」より、「復興優先」と言い出すのは目に見えている。従って野党は、小沢の「政治とカネ」を人質に、長期戦の構えで政権のイメージダウンを図ってゆくことしかあるまい。野田内閣は27日の予算委で法相・平岡秀夫が挑発に乗ってぶち切れて、野田をはらはらさせたが、このような前後の見境がつかない閣僚を多数抱えている。山岡賢次など疑惑の閣僚も多い。首相自身の外国人献金も未決着だ。追及材料に事欠かない。このようにぼろが出始めると、支持率が落ち始め、早期解散の風も吹き始める。とりわけ来年春に小沢に有罪判決が出れば、通常国会会期末までが解散・総選挙に追い込む絶好の機会となる。もちろんずっこければ年末解散や、通常国会冒頭解散もあり得る。国民の審判が決着となるしかないのだろう。
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