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2011-09-07 09:40

ASEANは頼りにならない

岡崎研究所  シンクタンク
 米ヘリテージ財団の8月5日付けウェブサイトで、同財団アジア研究センター所長のWalter Lohman が、「7月末にバリ島で開かれたASEAN 地域フォーラム(ARF)は同じことの繰り返しで前進がない。米国はASEANを頼りにせず、同盟国と協力して、自らシーレーンを守るべきだ」と言っています。すなわち、「1990年代後半、中国とASEANの間で、南シナ海における領土や権益争いを緩和しようと、行動規範の確立に向けての交渉が始まり、2002年に『南シナ海における関係国の行動に関する宣言』(DOC)が成立した。しかし、中国側が法的拘束力のある『規範』を嫌い、さらに、中小国と1対1で交渉したいがために、領土争いは二国間問題だと強固に主張した結果、DOC はASEAN 側が望んだような『行動規範』とはならなかった。7月のバリのASEAN 地域フォーラムで合意された『DOC実施のためのガイドライン』も、『行動規範』ではない。ピツワンASEAN 事務局長は歴史的成果と自画自賛したが、行動基準を設定できなかったのだから、内実は2002年の合意の繰り返しに過ぎない。要するに、実質を求める中国に対し、ASEANは『同意でき、何かしら動いたという感触が持てれば、それでよし』としており、これは、この地域の要の役を果たすべきASEAN の姿勢として問題だ。そうしたASEAN に米国の利益を託すわけにはいかない。米国は、べトナム、インドなどと戦略的パートナーシップを創設、強化し、ASEAN とは別に、航行の自由と同盟国の安全を守っていくべきだ」と論じています。

 誰とも敵対せず、誰をも傷つけず、はっきりした表現を避ける、いわゆるASEAN way に対する米国のいらだちを示す、典型的なアメリカ人の反応です。たしかに、バリ島の会議で何が進展したのか、資料を取り寄せて読んでみても、はっきり進展と言えるものは見出せませんでした。

 しかし、「にも関わらず、会議は成功だった」と思われます。米国がアジア復帰を宣言して以来、前とは違った雰囲気の中で会議が行われたこと自体が重要です。つまり、中国と明言しなくても、中国の脅威を認識して、米国の存在を歓迎し、南シナ海の問題を議論したということは、それだけで大変な違いです。

 米国は、ASEAN way から離れられないASEAN を永年無視して来ましたが、最近になって、ASEAN を地域のテコの支点と呼ぶに到っています。しかし、ASEAN に付き合って、自由民主主義諸国の利益を増進するためには、理解と忍耐が必要です。米国にASEAN の重要性を説得し、ASEAN way に耐えるよう導くには、それこそ日本が最適任であり、日本の重大な政治的外交的役割だと思われます。
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