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2011-08-10 04:10

国王とプレム大将の影響力喪失こそ、タイ内政混乱の真因

易原 俊雄  大学教員
 昨8月9日付けの本欄への投稿で岡崎研究所は、『ファイナンシャル・タイムズ』掲載の論文を引用しながら、「インラックは、タクシンの帰国を認めるべきでない」との論を展開しているが、それは当然のことである。新首相が「タクシンのクローン」であろうが、「犯罪者」となっている兄の帰国を認めた場合、混乱の再発が容易に予想される以上、そのような政治的自殺行為を犯す可能性は極めて低いと考えられるからである。

 タクシンにしても、帰国による政治的得失を冷静に判断するなら、帰国を強行することは差し控えるだろう。いまタイが抱える大問題は、タクシンの政治的復権の有無ではなく、1980年代初頭以来数多く発生した政治的大混乱を収拾できるかどうかの最終局面にあるということである。

 「国王を戴くタイの民主主義」を守護してきた国王とプレム枢密院議長の高齢化(国王84歳、プレム大将91歳)による政治的影響力の低下が根底にある。かりに今から20年前であったなら、タクシン的政治家がタイに存在しえたかどうかは、大いに疑問である。80年代初頭の「4月バカ・クーデター」から始まって、80年代半ばマヌーンによるクーデター未遂事件、91年のクーデター、92年の「5月事件」、06年の総選挙無効措置、同年9月のクーデター、08年秋の黄シャツによる首相府・空港占拠事件、昨春の赤シャツによるバンコク繁華街占拠事件・・・が続発している。

 こう見てくると、国王とプレム大将の影響力がどれほど低下したかを見て取ることが出来るだろう。両者がタイ内政に持っていた圧倒的な影響力は、いま失せつつあるのだ。国王の権威、これにプレム大将の政財界と国軍における隠然たる影響力が相俟って、タイ内政における錨の役割を果たしてきた。いま、タイ国内を見回した時、国王とプレム大将のコンビに代わる錨が見当たらない。そこにこそ、タイ内政の大難題があると言えるだろう。
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