6月25日に発表された復興構想会議の提言の致命的欠陥は、それを「経済の再生にどうつなげるか」という視点が欠落している点である。「提言」では「再生」という言葉は77件、「復興」は258件、「経済」は47件出てくるが、「デフレ」または「デフレーション」の言葉は一ヶ所も出てこない。提言付属の資料をみても「デフレ」、または「デフレーション」への言及はゼロだ。

　つまり、２０年デフレの日本経済への現状認識をせずに、ひたすら「復興」、「再生」を連呼している。経済を知らない、あるいはデフレを何とも思わない、幸せな評論家たちで復興構想会議の委員たちを構成したのは、財務官僚主導の事務局の策謀だったのだろうか。提言付属の資料には「阪神淡路大震災とのマクロ経済環境の違い」編が挿入されている。そこではさすがに、「名目ＧＤＰ　阪神淡路　平成6年度　489兆円」と比べて、「東日本大震災　平成22年度見通し　479兆円」という数値にふれているが、１６年前よりも１０兆円も経済の実額規模が少ないその異常さについての説明が一ヶ所もない。

　その代わり、基礎的財政収支、一般会計公債依存度、国と地方の長期債務残高、国債の格付けの悪化ぶりなど、財源の制約ばかり盛り込んでいる。つまり、復興構想会議は「再生」、「復興」という言葉だけ連呼して、あとは「特区をつくれ」などという個別のもっともらしい思いつきを集大成しているだけであり、「では、その費用は１６兆円以上だから、財源はどうするか」、「じゃあ増税でまかなう」という足し算、引き算である。増税がもたらす経済の縮小、つまりデフレ加速はもとより眼中にないから、増税しか浮かんでこない。

　復興構想会議は、のっけから「増税ありき」できたが、当初から「デフレ日本が大震災から再生、大復興を遂げるためにはどうすべきか」というビジョンを考えてこなかった。提言の副題「悲惨のなかの希望」は欺瞞であり、提言がその「原則5」に掲げる「被災地域の復興なくして、日本経済の再生はない。日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない。この認識に立ち、大震災からの復興と日本再生の同時進行を目指す」は空論である。こんな復興構想会議なるものに政策を丸投げする菅直人首相の無能不作為は恐るべしである。