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2006-06-18 22:29

「侵略」というのは短絡的ではないか

笠井啓道  高校教員
  「太平洋戦争か、大東亜戦争か 」のテーマをめぐって、6月9日および10日の2回にわたり連載投稿されました吉田春樹氏の「(1)日本の大陸進出は領土拡大と資源獲得が目的だった」および「(2)戦勝国にも戦争責任はあった」について、私見を述べさせていただきます。

  あの戦争の時代を実際に経験された方のご見解として、大変参考になりました。ただ、あの戦争の本質は何であったかを熟考する場合、「日本が中国に侵略を始めたところから戦争に入りました」とか、「歴史を遡って日本がそもそも朝鮮半島を含め中国大陸への進出を始めたのは、いわゆる帝国主義的領土拡大と資源獲得が目的でした」とまで言い切ることには、抵抗感を覚えました。

  といいますのは、「日本が」とか、「領土拡大と資源獲得が目的」などと明快に結論づけられているのだけをお聞きしますと、まるで日本の政府と国民が一丸となって、当初より「侵略意図」をもって、「領土拡大と資源獲得のため」着実に手を打っていったように、短絡的に響き、あるいは誤解されかねないからです。しかし、実際には日本の政府と国民は一丸となって当初から論理的、政策的に行動したわけではなく、歴代内閣の言動を見ても、当初は「紛争不拡大方針」をもって対処するのですが、「統帥権の独立」という明治憲法に内在する政府メカニズムの根本的欠陥のため独走する軍部の方針の追認に次々と追い込まれたものです。

  日本がナチス・ドイツと同じく当時の国際秩序の現状打破勢力であったこと、また結果として中国を「侵略」してしまったことは、歴史上の事実として受け入れることに何ら異論はありませんが、日本が大戦に深入りしていったプロセスは、日本の行動に対する米欧列強の対抗諸措置への自己防衛的側面もあり、決して当初より「侵略」ないし「領土拡大と資源獲得」のための論理一貫した政策的プロセスではなかった、というのが私の考えです。
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