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2011-06-23 09:36

米国のシリア介入に慎重な議論の根拠

岡崎研究所  シンクタンク
 The National Interest のウェブサイト5月12日付で Dov S. Zakheim 米元国防次官が「カダフィが(反政府派を)虐殺すると脅したリビアと違い、シリアでは実際に虐殺が行なわれてきたが、米国がシリアに介入すれば、戦火はパレスチナやイランにまで飛び火し、中東が大混乱に陥る可能性があるので、オバマがシリア非介入を決め込んでいるのは正しい選択だ」と論じています。すなわち「シリアは、人口の10%しかないアラウィ派が権力を握っている国であり、アラウィ派が権力を維持するためには弾圧するしかない。また、軍もアラウィ派から離れないだろうから、軍が現政権にとって代わる可能性もない、しかも、リビアで用いた虐殺回避の論理に従えば、本来、米国はシリアに介入しなければならないのだが、シリアに介入すれば、(1)レバノンのヒズボラが、シリアに親イスラエル政権が出来ることを怖れて、イスラエルにミサイル攻撃を仕掛けるかもしれない、(2)イランも盟友のシリアを失うことを怖れて、イラクのシーア派を梃子に介入するかもしれない、さらに、(3)米国がシリアの反政府派を支援すれば、今のシリア政権よりももっとイスラエルを敵視する過激スンニ派政権が誕生することになりかねない。いずれにしても、中東大動乱につながる恐れがある。イスラエル軍部も、より不安定になりかねない後継政権よりも、アサド現政権の方がまだましだと思っている、結局、この先、シリアでは反乱は鎮圧されることになり、米国内のリベラルは介入を叫ぶだろうが、オバマはそうした声は無視しなければならない」と言っています。

 ザケイムは、レーガン時代に国防次官補、ブッシュ時代に国防次官を務め、安全保障問題、中東問題には経験の深い人ですが、その論旨には賛成せざるを得ません。シリアが独裁政権であることは言うを待ちませんが、その目的は、アラウィ体制の保持であり、これを親米、反米、アラブナショナリスト、現実主義などに仕分けることは、無意味ではないかと思われます。

 シリアは、少数アラウィ派の支配を永続させるための高度の行政治安能力を持ち、外交面ではその情報機関は CIA と密接に協力し、イスラエルとの間には問題を起こさない友好関係を維持しながら、イランからは武器などの援助を仰ぎ、レバノンのヒズボラに対してはパトロン的な存在です。最近は非同盟中立化の傾向を強めているトルコとの関係も親密です。こうしたこと全てが現アラウィ政権の生き残りのためであり、西側の自由民主主義とか、アラブの反米ナショナリズムなどが働く余地はほとんど無い政権であるように思われます。従って、外からの働きかけは、シリア国内に波乱を起こすばかりとなる、というのがザケイムの判断でしょう。

 とすれば、今回の「中東の春」は、チュニジア、エジプトでは革命が成功、リビア、イエーメンではまだ情勢は流動的、バーレン、シリアでは弾圧が成功して、民主化は将来に先送りになる、という見通しに次第になってきたように思われます。     
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