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2011-05-12 07:28

渡部黄門が“誕生会”で党分裂回避狙う

杉浦 正章  政治評論家
 中曽根康弘を継ぐ「政界風見鶏」は誰かと言えば、民主党最高顧問・渡部恒三だろう。筆者とは「ワタスは東北のケネディーだす」と言って当選してきて以来の仲だが、渡部の言動をつぶさに追っていれば、だいたいの方向は分かる。田中角栄の薫陶を受けただけあって、筆者とは政局観が奇妙に一致するのだ。今度の小沢一郎との誕生会復活も、渡部の嗅覚が見事に働いている。おぼれる菅が「浜岡原発停止」で“浮き輪”を掴んだと判断、当面菅を助けようとしているに違いない。しかし、今回の渡部判断の欠陥は、ジョークで済むほど事態は甘くないことだ。とにかく同期の戦いは、政界でも、民間でも、死ぬまで続くが、負ける方はだいたい人が良くて、ずるがしこさが足りない。1969年初当選の渡部は、小沢と同期で、田中派時代は二人とも7奉行とされ、年の差が10歳あったが、互いに競い合ったものだ。碁仲間ではあるが、時にはすさまじい戦いも展開した。

 最近では小沢の意向で衆院議長になれず、横路孝弘に奪われたし、最高顧問もクビになった。仕返しは小沢の党員資格停止処分だ。「政治とカネ」で、党倫理委員長として処分を答申したのは、渡部自身だ。渡部はこの党員資格剥奪で最終戦争に勝ったと踏んでいた。ところが、どっこい小沢は復活した。折からの菅批判の波に乗って、党分裂も辞さぬ動きを開始したのだ。すでに菅を追い詰めるため、両院議員総会招集に必要な136人を上回る署名を集め終わり、戦う準備は着々と進んでいる。内閣不信任案にも同調しかねないとされる。一方菅は、「浜岡で勝った」とばかりにはしゃぎ始めており、周辺に内閣改造説まで流させて、元国会対策委員長・樽床伸二ら「中間派」へに“おいしい話”を持ちかけている。閣僚定員増加法案の成立などとてもおぼつかないのに、改造情報とは恐れ入る。捕らぬ狸の皮算用とはこのことだ。このまま激突のコースを走れば、党分裂だが、渡部にとって分裂ほど怖いものは無い。79歳で政治家人生は事実上終わりとなる。どの政党ももう“雇って”くれないからだ。

 したがって、菅には、5月11日夜公邸で会食して「菅内閣を支える」と表明。小沢対策としては、原理主義者の幹事長・岡田克也に党員資格問題で「融通を利かせろ」と働きかけたのだ。しかし、渡部には、菅をとことん支援する構えはないとみた。5月24日にともに誕生日を迎える小沢との誕生会に愛弟子・前原誠司を同席させるのが、その証拠だ。渡部は、とかく小沢批判で厳しい立場を貫いてきた前原を同席させることで、ポスト菅の「認知」をさせようと計っているのだ。前原は、最近グループの若手が小沢グループと接触するのを奨励しており、スタンスを変えようとしている。小沢も悪い感情をぬぐいつつあるようだ。渡部は菅への「絶対支持」ではなく、あくまで「党分裂回避」が狙いなのだ。

 このように誕生会をめぐる渡部の思惑は“特定”できるが、冒頭述べたように、誕生会をやったからと言って、物事が収まるわけではあるまい。政治家は最終決戦の腹は固めていても、最後の最後まで多数の支持を目指すものだ。誕生会をやろうといえば、小沢も「ノー」とは言わないのだ。菅政権をめぐる病状は会期末に向けてより深刻度を増そうとしており、根本的な治療につながらない対症療法を繰り返してもらちは明かないだろう。
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