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2011-04-18 17:31

(連載)中国との関係を再考せよ(1)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 中国と自由主義諸国との間には政治的な競合関係があるにもかかわらず、日本の経済界は中国をもっぱら「成長の機会をもたらす不可欠なパートナー」とのみ見なしている。さらに政策形成者の中には「先進諸国が高齢化にあえぐ一方で、中国は世界経済の牽引役を担う」と期待する者もいる。しかし、北京体制との関係は、政治的にも経済的にも再考を要する。バラク・オバマ大統領がAPECシンガポール首脳会議で演説したように、専制政治に「平伏礼賛」することが本当に我々の利益に適うのだろうか?

 まず、政治的な側面について述べたい。外交政策イニシアチブのエレン・ボーク所長は、ウィークリー・スタンダード誌への投稿で「オバマ政権の対話路線は、中国共産党体制の抑圧的な性質に変化をもたらしていない」と批判している。アラブ世界でジャスミン革命が起きてからというもの、中国当局は数多くの自由を求める活動家、弁護士、ブロガー達を逮捕している。ニューヨーク市弁護士連盟や全米弁護士連盟といったアメリカの人権弁護士団体が、中国政府にこうした逮捕者の釈放を要求したのに対し、5月にワシントンで開催される米中経済戦略対話では、人権問題は取り上げられない。ボーク氏は「オバマ政権は、民主化を差し置いて、経済に過大な比重を置いている」と言う。欧米から艾未未氏を釈放するよう圧力を受けたため、中国警察は艾氏について脱税、重婚、猥褻物流布という罪状を挙げた。中国が人権活動家の罪状を捏造してまで、自国内でのジャスミン運動を弾圧しようとしているのを見て、私は「オバマ政権は北京政府との経済優先外交を見直す必要がある」と考える。

 尖閣紛争のような地政学的対立にも注目すべきである。私は、オバマ政権の謝罪姿勢丸出しの世界政策が中国を自信過剰にさせたのではないか、と疑っている。これは東アジアのみならず全世界で当てはまる。スペインのエル・パイス紙のルイス・バセッツ副編集長は、リビア情勢に関して「西側民主主義諸国のリーダシップを執ろうとしないオバマ政権の過剰な低姿勢が、ヨーロッパの同盟国を失望させている」と主張する。

 非常に興味深いことに、日米双方の論客達は、日米関係の悪化に中国がつけ込むすきを与えた鳩山由紀夫前首相を批判しているが、オバマ大統領の対中政策の批判的検証は殆どしていない。鳩山氏は日米中の正三角形を主張した。また、普天間基地に関する二国間協定を撤回しようとした。ワシントン・ポスト紙が鳩山氏を「ルーピー」と呼ぶことは全くもって正しい。しかし鳩山氏ばかりに目を奪われると、オバマ氏の側の失態を見逃してしまう。オバマ氏が断固とした姿勢を見せていれば、日本の指導者がどれほど「ルーピー」であっても、中国が日米同盟を刺激するような危険な冒険を犯すことはなかったであろう。
(つづく)
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