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2011-04-04 19:38

大連立「2段階」論は、現実的な知恵だ

花岡 信昭  拓殖大学大学院教授
 大連立に向かって2段階論が出てきたという。とりあえず、自民、公明両党から3人程度が閣僚になって、挙国体制を築くという構想だ。産経の配信記事によれば、森喜朗元首相が推進しているとのことで、なるほど、これなら現実味はありそうだ。大連立となると当然のことながら政策協定が必要になる。早い話が、菅首相が初動体制の遅れなどを反省して退陣すれば、大連立は一気に進む。その場合、自民党から首相を出せば、さらにスムーズに実現するだろう。だが、菅首相が辞める気配はないし、自民党が求めている4K政策(子ども手当、戸別所得補償、高校無償化、高速道路無料化)をすべて棚上げするのも民主党内では異論が根強い。ここをつつきすぎると、小沢氏系がマニフェスト擁護で立ち上がってしまいかねない。そうしたもろもろの事情を考えた上での、現実的な策が2段階論だ。だから、自民党は谷垣総裁ではなく、大島副総裁や石破政調会長らを閣僚として出す案が進行中なのだという。

 戦後最大級の大惨事で、東北全体のゼロからのまちづくりをやろうというのだから、これは与党だ野党だとやり合っている余裕はない。解散・総選挙ですっきりさせれば別だが、統一地方選も正常には実施できないのが実態なのだから、早期総選挙などやれるわけがない。2段階論が強まった背景として西岡参院議長の判断が強く作用していることにも触れておかなくてはならない。菅首相は子ども手当のつなぎ法案について、衆院可決、参院否決、衆院で共産党、社民党の賛成で再議決というシナリオを描いていた。ところが、参院本会議で否決されるはずが、みんなの党や国民新党から若干の造反が出て、可否同数となった。そこで西岡議長が乗り出して可決を決めた。衆院に戻して再議決となると、共産党の助けが必要だ。これをやってつなぎ法案可決となると、菅政権は共産党に多大な「借り」をつくってしまう。となると、その後の大連立話も難しくなる。大連立に加わるのは、自民、民主、公明が中心になれば圧倒的な多数を確保できる。

 共産党や社民党にはどうぞいらっしゃいとはいえないのだ。救援、復興政策にしても、反原発、反米、反自衛隊の社民、共産が入っていたら、ややこしくて困る。第一、共産党がくわわる時点で自民党内に相当の異論が出てしまう。西岡議長はそうした流れを読み取って、裁定をくだしたのであろう。さすが、政治の世界に長くいた達人だけのことはある。これによって、共産党の出番を打ち砕いたのである。ついでながら、西岡氏は早大時代、雄弁会で森氏の入会審査にあたって、面接をやった側である。からだをこわしてラグビーの夢破れた森氏が雄弁会に誘われたのだが、森氏にいわせれば、やせほそった西岡氏がごほんごほんとセキをしながら「雄弁会に来たまえ」とやったので、つい情にほだされて・・・ということになる。まこと人生の転換点というのはおもいがけないところにあるものだ。

 いずれにしろ、平成25年夏には衆議院の任期は切れる。あと2年ちょっとだ。東北復興の進展にもよるが、どう見ても任期満了まで総選挙は難しいだろう。まずは、2-3人が緊急措置として閣僚に加わる。その後、大連立らしいあしらいを整えていけばいい。原発の問題が一段落して長期安定期に入れば、復興対策が前面に出てくる。これは新しい発想によるまちづくりをどうするかという一大構想だが、与野党での歩みよりは可能だろう。財源をどうするか、ここには大きな開きもあるが、そこは互いに知恵の絞り合いだ。かくして、任期満了選挙が近付けば、選挙制度が変更されていない限り、おのずと自民、民主を中心とした2大勢力に分かれていく。その分け方はいまとは違っているかもしれないが、小選挙区制がたとえ定数3の中選挙区制に変わったとしても、2大勢力が軸で、ここに第3極がどうからむかといった構図だろう。大政翼賛会などと心配する必要はない。総選挙の前にはそれなりの旗のもとで2大勢力が結集していくはずだ。
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