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2011-03-20 19:55

天野之弥IAEA事務局長に聞いた

花岡 信昭  拓殖大学大学院教授
 国際原子力機関(IAEA、本部・ウィーン)の天野之弥事務局長が、3月18日に1泊2日の強行日程で来日し、日本記者クラブで緊急記者会見がセットされたので、出向いた。天野氏は外務省出身で、日本人初のIAEA事務局長だ。4人の専門スタッフを同行し、スタッフは同夜から東京をはじめとして各地で独自の放射線測定を始めた。

 会見の内容は、その立場上言えないことも多いためか、新事実らしいものはなかったが、興味深かったのは、菅首相らと会談した一方で、東電では副社長が応対したということだ。原子力関連の国際機関のトップであるIAEAの事務局長が来日して、社長が出てこないというのは、本来はあり得ない。よほどの事情があったのか。東電はそういう「小さなこと」から信用失墜を増幅しかねないことを自覚すべきだろう。小生は、留学生の日本離れ現象が起きていることにちらっと触れて(特派員が大勢いたから、特定の国を名指しすることは避けた)、「政府発表やメディア報道がどこかおかしいため、国際的な風評被害が起きているのではないか」と質問してみた。

 「メディアのことまで言及はできない」と慎重な天野氏だったが、IAEAは原子力安全保安院から情報を得て、これを各国と共有していること、事故対応は基本的にはその国の責任で行うべきものであること、日本政府の「20-30キロ規制」は理解できること・・・などを明らかにした。1時間のやりとりを聞いていて、天野氏は「深刻な事態である」ことは強調したが、はっきりと言明したわけではないものの「スリーマイルのレベルには達していない」と受け止めているように感じた。

 保安院はこの会見の前に「スリーマイルと同じレベル5に上げた」と発表したが、天野氏は「レベル4」と認識していたようだ。どうも全体から判断すると、「20-30キロ規制」はスリーマイル級のメルトダウンが起きた場合でも食い止められる限界ということらしい。それも最悪のケースでだ。これは当方の勝手な印象であって、天野氏が言明したわけではない。それにしても、外国人の日本脱出が続いているのはどう判断すべきか。菅首相はじめ政府当局の説明が、いかにも中途半端なまま推移しているためではないか。信頼感の喪失が一番こわい。これが風評被害を生むことになる。
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