国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-03-02 07:36

とどめは首相問責決議しかあるまい

杉浦 正章  政治評論家
 裏切られた揚げ句の“大甘処分”で、幹事長・岡田克也が「若い議員を育てる観点も含めた」と述べたのは、噴飯ものだ。大のおとなに言う言葉ではない。小沢別動隊の予算本会議欠席への処分は、首相・菅直人以下執行部のリーダーシップの欠如を露呈させた。菅は崖っぷちの松に辛うじてぶら下がっている形だが、その執念は異常であり、自ら手を離すことなどあり得ない。首相を辞めさせることは容易ではないが、唯一の方法は参院での問責決議案可決だ。憲法上の強制力はないが、可決されればすべての首相、閣僚が辞任に追い込まれている。焦点は、自公両党がどのタイミングで踏み切るかにかかっている。とにかく政党組織としての規律など、どこかへ吹き飛んだ。公然と政権を批判し、会派離脱届けを提出し、議員として最重要案件の予算本会議を欠席して、小沢一郎の権力闘争に手を貸している議員らを、執行部はまだ手なずけようとしているのだろうか。

 「私は、菅さんを処分したい」(高松和夫)とうそぶく議員ら15人を事実上おとがめなしの「厳重注意」、首謀者一人だけをもっとも軽い党員資格停止処分では、御政道が成り立つまい。リーダー格の渡辺浩一郎は記者会見で「小沢一郎元代表に対する党執行部の対応に反対するために行動したのではない」と、小沢との関わり合いを否定したが、これを「いけしゃあしゃあ」という。尻が割れているのだ。毎日新聞によると、造反議員の一人が国対幹部に涙声の電話で「神の声があれば、出る」と述べたというのだ。神の声とは「小沢の指示」に他ならない。小沢は16人を別動隊として、政権揺さぶりの波状攻撃に“利用”しているのであり、いったん打った王手飛車取りの“奇策”を覆すわけがないのだ。それにしても小沢も、自分を「神格化」させるまでに至ったとは、恐れ入る。こうして予算案は財源の裏付けのないまま参院に移ったが、辞めない首相を総辞職か解散に追い込む方法は、冒頭述べた問責決議可決しかない。

 衆院での不信任案可決は、小沢が参加しなければあり得ないからだ。そこを見据えて自民党幹事長・石原伸晃は3月1日「民主党の矛盾点を追い詰め、きたるタイミングで問責決議案が提出されることになるのではないか」と、首相問責決議案を提出する方針を鮮明にさせた。問責決議は過去5例の可決がすべて辞任に結びついている。防衛庁長官・額賀福志郎は可決後1か月で辞任。首相・福田康夫は3か月後、首相・麻生太郎は2か月後、官房長官・仙谷由人と国交相馬淵澄夫は2か月後に、それぞれ辞任に至っている。衆院解散が首相のもつ「伝家の宝刀」なら、ねじれ国会における野党の「伝家の宝刀は」いまや問責決議可決となったのだ。首相を辞任に至らす前例は、野党時代に攻撃の先頭に立った菅自らが作ったものであり、今回も可決されれば、辞任か、やぶれかぶれの解散しか選択肢はないだろう。参院の審議がすべてストップしては、進退は谷(きわ)まるしかない。

 問題はそのタイミングだ。提出する時期を誤れば、元も子もなくなる。自民党としてはまず統一地方選挙前を狙うだろう。参院予算委審議で菅政権の体たらくを暴き、できれば内閣支持率を10%台から一ケタ台に落とす。小沢の「菅降ろし」の波状攻撃は続くだろうから、心理的にも、物理的にも、菅は追い込まれる。そのうちに衆院だけでなく、一枚岩とされる参院民主党でも「造反」が出てくる可能性がある。自民党は、公明党が駄々をこねないようなだめすかし、少数政党の機嫌を損ねないようにして、提出へとこぎ着けねばならないから、時期設定はきわめて難しい。公明党も代表・山口那津男が地方統一選とのダブル選挙も辞さない姿勢をみせているものの、なお躊躇があり、働きかけ方は難しい。しかし、菅批判が盛り上がりを見せている現状を逸したら、次のチャンスがいつ来るとは限らない。政権交代で自公政権復活の甘い誘いが、公明党を落とす唯一の作戦だ。早ければ今月下旬が問責提出の最初のチャンスとなるのではないか。遅れると、統一地方選の最中か5月連休明けとなるが、鉄は熱いうちに打たないと、世論の矛先が野党に向かいかねない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会