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2006-05-29 04:13

米中蜜月時代の認識は大きな誤り

西岡健司  団体役員
 叶芳和氏は、5月15日付けの「CEACコラム」への寄稿の中で「米中による世界共同管理論の台頭」と題し、現在「世界の覇権構造の再構築に関わる変化が生じていることに注目すべきである」として、中国と米国の関係は単なる「建設的なパートナー」から近い将来「戦略的パートナー」に転換するかも知れない、という中国国内の見方を紹介しておられます。「いまや、米中関係は難しい懸案事項は何もないのです。世界に手を焼いている米国は、中国に国際社会の問題にもっと関与することを要請しているのです。アジアやアフリカにおける揉め事は中国に任せようとしています。中国の部分覇権を容認しているのではないか」と述べられ、「米中による世界共同管理論の台頭」を主張しておられます。

 しかし、私から言わせれば、この議論は端的にいって中国側に都合の良い、いわば wishful thinking の請け売り以外の何ものでもありません。米国は、これまで一貫して中国における人権状況に深い憂慮を示してきています。また、近年は中国の不透明極まりない軍事予算の巨大化、とくに最新型潜水艦を含む遠距離航行能力を有する海軍力の増強やロシアとの合同軍事演習の実施等の動きに神経をとがらせています。さらには中国の対米貿易黒字の累積による米中経済摩擦問題の顕在化もあります。「米中関係は難しい懸案事項は何もないのです」と、どうして言えるのでしょうか、余りにも偏った見方といわざるを得ません。

 叶氏は、さらに「この新しい米中関係は、いまなお冷戦時代の思考を引きずっている日本の国際政治学者には理解できないかもしれません。日本には今なお、日米による中国封じ込めを考えている人たちがいます。しかし、果たして今、米国は中国封じ込めを考えているでしょうか。米国は自らの負担を軽くするため、中国のある程度の大国化(部分覇権)を容認しているのではないでしょうか。日本人の国際政治音痴が懸念されます」と論じ、「日米同盟にはその経済的根拠がなくなっている。日米同盟堅持論は宗教か」と切って捨てておられます。 率直に言って、叶氏の議論は、経済しか見ておられず、その経済に関する議論も日米中トライアングルの実相(一番弱い環は中国です)から外れた議論をしておられる。「米中が蜜月時代にある」との認識を前提とする叶氏のご意見には、とてもついて行けません。
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