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2011-01-30 13:01

(連載)中国という国について思う(2)

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 胡錦濤訪米に際しては、米国上下両院の有力議員と非公開会議の機会が設けられたり(訪日の際に衆参両院議員と同様の機会をセットする、なんて想像できますか?)、大統領主催の晩餐会の席上軽く鞘当てがあったり、と話題に事欠かないが、やはり一番面白かったのは、胡主席が(おそらく生まれて初めて)西側流の記者会見に出席したことだろう。実はオバマ大統領訪中の際にも、同行記者団を含めた同様の企画があったのだが、これは中国側の拒否にあって実現しなかったという経緯がある。

 今回の記者会見については「胡錦濤フリープレスと会見」と題したダナ・ミルバンク(ワシントンポスト電子版1.19)の記事(日本でも一部新聞の電子版で紹介された)が面白いので紹介したい。普通こうした会見には同時通訳が使われるのだが、中国側の強い意向で逐語通訳になったという。まあ、「同時通訳は不正確だから逐語にした」というのも、一理はあるが、逐語にすれば会見時間は半分ですむ、という方が大きかったのかもしれない。例のノーベル平和賞の騒ぎもあったことだし、予想通り焦点は中国の人権問題に集中した。

 胡主席への質問の口火を切ったのはAPのベン・フェラーで、オバマ大統領への質問の後「人権問題についての中国の対応をどんな風に正当化なさるのか。また、この問題は米国国民に関わりがあるとお考えですか?」とやった。ところが胡主席はこれには答えないで、中国中央テレビの女性記者の方を向いて、「友好と相互関係」についての当たり障りのない質問に、用意した資料に基づいて長々と答えた。次にブルームバーグのハンス・ニコルスが「同僚記者の人権についての質問にお答えがないようだが、答えていただけないだろうか」とやったものだ。北京だったら間違いなく投獄ものだろう。

 胡主席は微笑しつつ掌を上向けるジェスチャーで、「一体何の騒ぎか解らない」というふりをしつつ、「翻訳・通訳上の技術的問題で、私は人権についてのご質問を聞いていない」と答えたものだ。実はフェラーの質問の最中に、胡主席は、耳を指差しながら、周りを見渡し、お付きが飛んできて耳許で囁く、という伏線はひいてあった。中国語の解る同席者によれば、お付きは質問を完全に翻訳していたというが。そして、そう答えた後、今度はお身内の新華社が質問するのを待ち構えていた。ところがニコルスは譲らない。とうとう通訳上の問題ですませる訳にはゆかなくなり、胡主席は「中国は巨大な人口を持ち、改革途上にある発展途上国です。従って数多くの経済的、社会的挑戦に直面しており、人権の面でもなさねばならぬことは多いと思います」と答えた。ミルバンクは、胡主席が会見を好まない理由が解った。正直に答えなければならないからだ、と締めくくる。

 筆者にいわせれば、ミルバンクは甘い。この答え自体手垢がついた言い古されたものに過ぎない。「これが正直な答えだ」というのでは、いかに胡主席が額に冷や汗をにじませて答えようとも、既に術中にはまっている訳で、米国のプレスは意外とちょろいね、と思われているかも。(おわり)
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