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2011-01-29 07:28

(連載)中国という国について思う(1)

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 中国が、日本を抜いてGDP世界第2位に躍進した。ちなみに、中国の人口は日本の10倍以上なのだから、本当に日本を追い越すのならば、GDPが日本の10倍あってもおかしくない。それがグロスで追い越されただけで、落日の始まりみたいに日本人が大騒ぎするのは、いかがなものか。まあ、この点はしばらくおくとして、その中国だが、やはりこの躍進が可能になったことについては、米国市場があづかって力あるのはいうまでもない。そして、のし上がってきた中国が、米国市場で取りざたされる内容も、30年前に同じような地位にあった日本と、よく似ている。

 ワシントン・ポスト(電子版)1月19日のジョン・ポンフライの署名記事によれば、中国は「市場開放が十分でない」、「通貨を安めに誘導している」、「知的所有権に対する保護がなされていない」といった非難を浴びている。「不公正な貿易慣行によって米国市場から儲けている。これでは米国に仇なすものではないか」という訳だ。まさに往年の日本を思わせるものがある。「かくてはならじ」という訳なのだろうか、2008年には50億ドルだった中国の米国国内投資が、翌年には120億ドルに増加した。中国企業の米国での雇用人口も1万人を超えた。まさに80年代に87億ドルだった日本の対米投資が、90年代には8千3百億ドルと飛躍的に増加した、のに酷似している。

 違うのは、日本の場合、進出したのはトヨタ、ソニーといった既に知名度の高い企業であり、その意味では米国市場が求めていたものに対して投資が行われたという色彩があったのに比して、中国の場合には米国の技術、マネジメント、そしてアイディアを吸収したい、という意図が明白で、自国国益追求という影が見え隠れすることである。テキサスでUNOCALを買収しようとして、米議会から阻止されたケースでは、資源確保の意図を疑われたし、電気通信産業への進出にもそうした疑念を抱くアメリカ人が多いという。

 胡錦涛国家主席の訪米に際して、ソフトムードの売り込みに躍起な中国だが、むき出しの国家利益追求が天性ともいうべきお国ぶりが、一朝一夕に変わるとも思われないし、変える気もないのではないだろうか。だから、たとえマキャベリスティックな動機であってでも良いから、国際ルールに則ってみようと振る舞ってみればどうだろう。それだけで、あの国には相当良い影響が出るような気がしないでもない。所得水準の向上、内部矛盾の激化といった要素が、民主主義的手法をあの国に芽生えさせ、育むうえでどれほどのモーメントになるかは、定かではないのだから、とりあえずは猫でも良いからかぶってみよう、と思ってくれることを、期待したいものだ。(つづく)
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