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2011-01-21 07:35

菅・岡田に「小沢切り」の才覚なし

杉浦 正章  政治評論家
 元々小沢に打撃を与えられるのは証人喚問なのに、小沢に配慮して「政治倫理審査会議決」などにこだわるから、幹事長・岡田克也も、マスコミから「やるやる詐欺」扱いされるのだ。「証人喚問」と発言する岡田の声もどこか勢いがなく、「本当にやれるのか」という疑念が先に立つ。民主党政権は重要な外交・内政課題に事前調整も、洞察力もなく、安易に方向性を打ち出して、すべからく失敗、自滅している。その繰り返しが、今のていたらくなのだ。今回の「小沢切り」も実態は、八方塞がりだ。証人喚問といっても、まず党内がまとまるかどうかだ。ロッキード事件で渦中の人となった田中角栄の証人喚問が実現しなかった背景は、「田中軍団」の結束があった。明らかに、小沢の動きはこれを意識している。代表選200票を背景にすれば、強気の姿勢を貫ける、とみているのだ。岡田の調整能力ではとても民主党内が一致して証人喚問という姿にはなりにくい。

 加えて、喚問は全会一致が原則であり、小沢の手が回っている亀井静香のいる国民新党が反対に回れば、実現しない。額賀福志郎の喚問が、共産党一党の反対で実現しなかった例もある。さらに、喚問が実現しても、実効が上がるかだ。駆け出し記者がよく「偽証罪が適用されるから、小沢は逃れられない」旨の記事を書いているが、甘い。確かに虚偽と認識して偽証すれば、3月以上10年以下の懲役刑が待っているが、大きな抜け道がある。刑法の偽証罪は、故意犯のみを罰するから、「現在の記憶」の通りに証言したと言えば、適用しがたい。だからロッキード事件で国際興業社主であった小佐野賢治が「記憶にございません」を連発し、その後の喚問では常套用語となったのだ。小沢自身も、東京佐川急便事件で喚問されており、その辺のツボは十分心得ているはずだ。

 証人喚問が実現するかどうかがあやふやで、実現しても「記憶にない」で済むとなれば、何か手はあるのか。首相・菅直人が小沢の出処進退に言及し、離党・議員辞職を暗に求めたが、それを実現できるのか。強制起訴で世論の憤りが最高潮に達したところを狙い撃ちすれば、それなりの追い込み効果はあろう。おそらく岡田は「離党勧告」まではやるかもしれない。しかし、離党を求めても、小沢がこれに応じず、塹壕に籠もって弾をやり過ごすのは、目に見えている。離党といっても、予算審議の最中に本当に離党させて、場合によっては民主党が過半数を失う覚悟が菅にあるのか。

 いくら「脱小沢」の支持率がほしいといっても、政局が一挙に流動化した結果、解散や総辞職と引き替えになっては、元も子もなくなる。議員辞職も、自民党が決議案提出を準備しているが、やはり党分裂の危機が伴う。自民党の狙いもそこにある。戦後決議を受けて議員辞職したケースもない。要するに、始末に負えないのである。小沢が裁判を逆手にとって、三権分立を盾に居座り続けたら、為す術がないのである。小沢は政局の先を読んでいる。小沢と同程度に先を読める幹部は、失礼ながら民主党にはいない。小沢は、塹壕に入っていれば、そのうちに菅政権の方が高転びに転ぶ、と踏んでいるのだ。
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