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2010-12-28 05:59

「リテラシー」と「識字」の異同について

四条 秀雄  不動産業
 筆者は、11月11日付けの本欄への投稿「グローバル化世界における日本の未来」において、「日本は、成長を志向するか?安定を志向するか?それが問われている」として、「対外的に積極的に拡張し、世界的な自由化を求めつつ、対内的には国内の統一や調和を維持するのが理想だが、どんな帝国もその両立に歴史的に失敗している。長い平和を経験したのは、キリスト教の言葉で人々の内面を律したローマ帝国と漢字という表意文字の安定性で人々の思考を律した中華帝国だけだ。この二つの帝国だけが、大衆の思考を制御する手段をもった帝国だった」と書いた。

 これについてもう少し説明をしたいと思います。日本文化には、この二つの流れが注ぎ込んで、一つの訳語において微妙な「誤訳」という形で、裏表に張り付いている面白い現象があるからです。「リテラシー」と「識字」は、その象徴的な例だと言えると思います。

 「リテラシー」とは、国連の定義では「literacy as the "ability to identify, understand, interpret, create, communicate, compute and use printed and written materials associated with varying contexts.」とされています。そして「識字」とは「識漢字」として受け止められてきました。日本人にとって読み書きとは漢字の利用能力であったわけです。批判的思考とか、言語技術とか、リテラシーという考えは、最近の考え方ですが、現在の日本には両者が渾然とした状態で存在しています。「識字」は「識漢字」として「リテラシー」でもあるわけです。

 両者の違いは、イメージを文字へと圧縮する方法にあります。「リテラシー」の世界では、要約から批判を経て、定理に圧縮されます。時を超えた安定性である真理を導くための総合的なテキスト操作能力を指すわけです。ところが、「識字」とは、千単位のイメージを象徴する表意文字の操作能力を指します。そして、漢字で書かれたテキストにも、論理的な真理に至らないにしても、ある程度の時を超える再現性があったわけです。この再現性が社会に安定性をもたらし、帝国を精神的に維持させたのだと思います。
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