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2010-12-23 08:43

疑念のある憲法第89条後段の趣旨

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 クリスマス商戦たけなわである。いまさらこんなことをいうまでもないが、これはもともとキリスト教のお祝いで、キリストの生誕を祝うもの。お馴染みサンタ・クロースは発生的にはかなり土俗性の強いキャラクターだが、彼も世界的地位を克ち得たようだ。キリスト教のお祝いを国民こぞって自分のものにする。まあ、おおよそが宗教心など皆無な商魂逞しい行事の一つ、というくらいの認識だろうから、あまり目くじらたてる方が野暮というものかもしれない。日本のキリスト教信者は一度も人口の1%を超えたことがないというから、なおさらこの狂熱ぶりには驚かされようというものだ。

 ことが商いだ、セールだ、プレゼントだといっている分には、バレンタイン・デーの例もあることだから余り驚かないが、公共施設が大きなクリスマスツリーを建てて、イルミネーションまで飾る、という段になると、いささか首を傾げる。憲法第89条は「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と明確に定めており、公共の建物の建設に当たって神主を呼ぶ地鎮祭がこれに違反するとして、玉串料をあちこちの市町村が返還させられたのは、周知の事実だ。ジングル・ベルだなどと浮かれて、あどけなくツリーを飾ってよいというものではなさそうに思われるのだが。

 もともとは、第二次大戦中の天皇を頂点とした神政一致の悪夢からの脱却を意図した憲法の規定だから、その趣旨は理解出来る。どこぞやの教団が国立の戒壇を作ろうなどというのも、これでチェック出来ていることになる。信じたくもない神様を押し付けられるのはかなわないから、これはこれで意味のある規定だと考えてよいだろう。ところがこの第89条には後段があって、「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し」ても、「これを支出し、又はその利用に供してはならない」とされている。「公の支配」というのは、「オカミのいうことなら何でもはいはいと聞く」ということだ、と受け取るのが普通だろう。つまり、「オカミの、お役所のいうなりにならないような事業には税金を使ってはいけない」ということになる。ひらたくいえば、「税金による補助が欲しかったら、お役所の言うなりになれ」みたいな、メンタリティがあると言ってよい。

 事実、所謂私学助成、つまり私立学校に対する国庫補助が憲法違反ではないかと争われたことがあった。この時裁判所は「公の支配」というのをゆるく解釈して、ゆるやかにでもあれ、法律の縛りがかかっていれば、「公の支配」の下にあると見なすとした。しかし、指導・監督とか、節度ある活動とか、さまざまな小理屈をつけて、役所が民間組織に介入する理論的支柱の機能を、この憲法第89条は果たしているという側面は否定出来ない。公益法人制度改悪などはまさにその典型だと言ってよいだろう。
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