国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-12-17 13:31

捕鯨問題で日豪関係を壊してよいのか

中山 太郎  研究所客員研究員
 12月16日、都内某所で豪野党党首トニー・アボット氏の話を拝聴した。同氏は、政治では自由主義、経済では市場競争原理の信奉者でもある。日豪関係についての彼の発言は、いまいち歯切れが悪かった。豪も今年の総選挙で与党労働党が連邦議会の過半数を失ったが、野党も過半数には届いていない。そのような中で、労働党は、ラッド首相が退き、新しい指導者ギラードが、豪史上初めての女性首相に就任した。

 これまで、日本と豪は、アジアにおいて、お互い、自由民主主義の理念を掲げるまともな中堅以上の国同志として、政治経済の現場ではかなり仲が良かった。領事事務を担当するアジア勤務の知り合いのノンキャリ外交官の話でも、情報収集はじめ、困った時は「豪外交官頼みだ」と述べている。安全保障面でも、わが国自衛隊が、イラクをはじめとする多くの場面で、手足を縛られた状態で立ち往生しているのを支援してくれていた。親中国外交に大きく舵を切ったラッド前首相は、ギラード新内閣で外相に就任したが、先般の日中の尖閣問題を機に、中国との関係をさらに改善をしてきている。自閉症気味の日本の論壇、マスコミは、些細な日本攻撃でも「決して許すことはできない」とまなじりを決するが、親中のラッドも、首相の時は人権、チベットできちんと中国批判は行なった。そのつど、多くの煮え湯を中国から飲ませられている。その一つが、豪企業の産業スパイ問題だった。

 日豪関係は冷却化してきている。現在シー・シェパードは、2隻の船を出し、日本の捕鯨調査船を追跡中である。衝突は時間の問題だ。アボット氏は「日本の伝統文化保持の気持ちは分かるが、はるばる他人の海域近くまで船を出してのクジラ虐殺は、考え直してくれ」と述べたが、今豪国内で強くなりつつある環境団体などの激しい反発を意識した、苦しい胸のうちが垣間見られた。

 1970年代、メルボルン在勤のフランス領事と会話したことがあったが、「南太平洋の仏の核実験に反発した豪の過激団体に、事務所を灰で滅茶苦茶にされてしまいました」と、笑いながら述べていたのを思い出した。豪が提訴した、国際司法裁判所での審理も進行中だ。民主党政権は、また行き当たりばったりの対応を行なうのか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会