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2010-12-13 08:20

「安定的な衰退」のために求められる思考と論理

四条秀雄  不動産業
 筆者は、11月11日付けの本欄への投稿で「グローバル化する世界において、日本はどのような未来を志向すべきか。成長を志向するか?安定を志向するか?それが問われている。小泉時代までで成長路線のほとんどはテストされ、すべて要求を満たさなかった。成長路線は捨てるべきである。『いかに安定的に衰退するか?』をこそ、われわれは将来の日本の課題とすべきだ。その為には、深尾光洋氏の言うようなマイナス金利の発想があってもよい。これを安定化にどう役立てるか?」と問題提起しましたが、その議論をもう少し掘り下げてみたいと思います。「安定的な衰退」とは、投資と償却の水準をコントロールしながら、望んだ資産と所得の状態へと縮小することです。その逆の「不安定な衰退」とは、投資の原資となる粗利益すらも失って、為す術もなく資産を朽ち果てさせ、所得を失ってしまうことを言います。前者では、ドイツにおいて古くなった公共住宅を、数では減らしながら、質的には向上させて、リフォームした例があります。後者には、日本のシャッター商店街の例があげられるでしょう。

 将来の日本が「安定的な衰退」の過程を選ぶ時に最大の障害となるのは、経済社会に関するすべての思考と論理が「成長すること」を前提に組み立てられているということです。つまり、望んだ資産と所得の状態をコントロールするための投資が、成長を前提とした配当と利子に導かれているということです。一方、衰退する経済社会は、全体としての資産が縮小していくわけですから、マイナスの利子を社会が受け入れる必要があります。配当については、衰退する経済社会においても、部分、部分では様々な過程がありますから、プラスとして残る部分もあるでしょう。しかし、社会全体としては、マイナスの金利が必要になると思います。このような訳ですから、「安定的な衰退」のための課題は「成長に拠らずして、如何に投資を導き得るか?」ということになります。
 
 さて、今現在の日本という資産の大部分は、日本人によってファイナンスされています。ファイナンスされているということは、運用され、買われ、所有され、売られていない、ということです。そこで、問題は「何処でこの状態に変化が起きるか?」ということです。結論から言ってしまうと、マイナス金利の下でも、日本という資産に投資を継続していける鍵は、愛国心、郷土愛、永遠を求めない心構えにあると思います。この説明では、漠然とした印象を与えてしまいますが、国境を越えた資産取引の局面で現れるホーム・バイアス現象として知られています。おそらく、マイナス1~2%のどこか、人の一生である70~80年の時間を償却する率のどこかに、マイナス金利を許容する範囲があるのではないかと考えます。衰退する経済社会を安定的に管理する政治は、この意味でその構成員を全人格的に捉える政治でなければならないでしょう。


 ここで、「日本は何故成長を諦めなければならないか?」について、考えてみます。最近20年間の日本の名目成長のグラフを見れば分かると思いますが、これは力のバランスが取れているグラフです。何と何の力が釣り合っているかと言えば、日本が成長しようとする力とそれを阻止しようとする力です。それが「ゼロ成長」の意味だと思います。基本的に米国に追随して、日本人の民間部門が在外資産購入を増やしつつ、日本経済の成長を図ったのが、小泉時代でした。それは日本が成長する最後の解答(可能性)だったと思います。それがリーマンショックという結果を見た以上、もはや日本が主体的に努力して成長する道は塞がれたのです。これからも色んなことを言う人がいるでしょうが、その多くは日本の経済システムを解体する意図を持っていると考えていいでしょう。ですから、私は衰退の道を正しいと考えましたし、できるなら安定的に整然と衰退したいと考えます。
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