国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-11-10 11:40

海上保安庁からなぜビデオが流出したか

若林 洋介  学習塾経営
 今回の尖閣ビデオ流出事件に関して、海上保安官がビデオを公開しない“政府に対する義憤”に駆られての行動であるという見方があるが、果たしてそうであろうか。私は別な観点からその理由を検討してみたい。海上保安庁は、2年前の尖閣沖における台湾漁船衝突事件で大失態を演じている。日本の領海で起きた事件であったが、海上保安庁は台湾政府の猛抗議に合い、最終的には自らの非を認め、「おわび」の書簡を台湾政府に送って一件落着している。

 台湾政府の、謝罪・賠償請求に、事実上応ずることによって事態を収拾せざるを得なかったのである。このときの台湾側の主張は「日本側の巡視船が意図的に衝突して来た」というものであったが、日本側もその主張を一部認めざるを得なかった。また、その際海上保安庁の巡視船「こしき」の堤信行船長の証言にも一部ウソが発覚し、台湾漁船船長と共に書類送検されたのである。

 以上のように海上保安庁は、二年前の台湾漁船衝突問題において、大失態を演じて、大きなダメージを受けたのだ。そして今回の中国漁船衝突事件(拿捕事件)である。中国側は2年前の台湾政府と同じように「日本側から衝突して来た」と反論して来たということになる。「海上保安庁の現場の証言は信用できない」という反応には、非常に敏感な状態に置かれていたことは、容易に想像がつくというものだ。2年前、同じ海域での台湾漁船衝突事件で信用を失墜したこともあり、何としても汚名挽回したかったというのが、海上保安庁(保安官)の置かれた状況なのだ。

 マスコミをはじめとして、多くの日本人は、2年前の台湾漁船衝突事件における海上保安庁の大失態については覚えてはいないであろうが、海上保安庁(保安官)の認識とはそこに大きなズレがあるのではないか。2008年6月の台湾漁船衝突事件を第1次尖閣事件と命名し、本年9月の中国漁船衝突事件を第2次尖閣事件として位置づけなければ、尖閣ビデオ流出事件の本質は見えて来ないのではないか。マスコミの報道などでも、第1次尖閣事件(台湾漁船衝突事件)についてのしっかりした情報提供をした上で、今回の第2次尖閣事件(中国漁船衝突事件)を議論するように国民的議論を深めてゆくべきではないのか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会