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2010-11-10 07:32

公明の“両てんびん”は変わらない

杉浦正章  政治評論家
 1か月前までは補正予算案に賛成の方針を固めていた公明党が、関ヶ原の小早川秀秋なみの大転換で、反対に回った。新聞、テレビは総じて「政権に打撃」との単純な受け止め方をしている。しかし、この政党の動向は常に眉に唾(つば)をつけて見る必要がある。政局慣れ、悪い言葉で言えば“悪擦れ”しているからである。その“底意”はどこにあるかというと、補正予算関連法案には賛成するという一点から解きほぐせる。要するに、“半身の構え”で、両てんびんを掛けているのだ。補正予算案に反対の方針は、政調全体会議で決まった。「補正予算とはいえ政局ととらえるべきだ」という意見に象徴されるように、尖閣事件、「政治とカネ」などへの対応が象徴する菅政権の「体たらく」に、“表面上”ついて行けないということだ。

 しかしこの政党の方針決定は、創価学会の意向が左右する傾向があるのに加え、議員の発言などいつでも演出できる特性を持っている。そのことを念頭に入れておく必要がある。公明党の反対方針を踏まえて、自民党も野党の共同歩調を名目上保つことができ、採決の日程が決まるに至った。多少の遅れはともかくとして、補正予算案今国会成立のめどが立ったのだ。「反対」が刺激となって、政府・与党が本心では胸をなで下ろす形となっている。結果として公明党の姿勢は、決定的対決回避へとつながっているのだ。誰も気づいていないが、もともとアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が予定されている中で、日本の国会の大混乱を見せられないという、“たが”が与野党にはまっていたのも、11月15日への採決先送りの理由だ。

 焦点は、冒頭に述べたように、公明党が関与してきた補正予算関連法案である地方交付税改正案への対応である。公明党は、地方での予算執行に影響が出ないようにするため、同法案には賛成する方針だという。補正に反対して関連法案に賛成するという大矛盾だが、この構図の持つ意味は大きい。なぜなら、菅政権を“3月危機”に追い込めるかどうかのカギは、通常国会の本予算審議において参院野党が結束して予算関連法案に反対できるかどうかにかかっているからだ。公明党が賛成すれば、少なくとも国会審議の面からの政権危機は回避可能である。

 公明党にとっても、補正関連法案賛成は与党の信頼感を確保出来て、今後の予算編成の過程において本予算への関与を強めてゆくに当たっての補強剤になる。おそらく与党は「公明党様々」で、公明党の主張は何でも聞いて、来年度予算案に取り入れるだろう。要するに、菅が国会審議で送り続けた公明党への秋波は、結構利いていることになる。もっとも尖閣、「政治とカネ」でみせた菅政権の醜態は、今後も確定的に続くことが予想される。ずっこけ政治が繰り返され、支持率が危険水域の20%に陥るような事態になれば、さすがの公明党も、軸足を全面的に野党に置かざるを得なくなるだろう。その意味で小早川流の“半身の構え”は依然続くと見なければなるまい。
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