国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-11-05 07:31

小沢招致は国会の議決しかない

杉浦 正章  政治評論家
 「おれが作った」とかねてから自慢していた政治倫理審査会に、小沢一郎は出席拒否である。それも「司法で取り上げられたから」などという小賢しい理屈をつけての上である。これにたいして民主党独自の対応では、小沢の離党・政界再編に直結しかねないため、恐らく首相・菅直人以下腰が引けている。かくなる上は、与野党の議決で政倫審に招致するか、これに応じなければ出席を強制できる証人喚問を要求するしかない。国会が一致して動くべき時だ。民主党幹事長・岡田克也と小沢の会談が物別れに終わった後、最高顧問・渡部恒三が「党員である限り、どうしても幹事長の言うことを聞けないという場合は、党を離党するということだろう」と強く反発。「除名すべきだ」という声もあちこちで出始めた。

 いずれも威勢だけはいいが、犬の遠吠えに似て実行力が伴わない。なぜかといえば、離党や除名は小沢の得意技である党分裂・政界再編に直結する事があり得るからだ。民主党内は、北海道5区補選の惨敗などで、代表選挙で小沢に投票した200人の衆参議員の多くが、あらためて自らの不明を恥じ始めているのが実情だろう。しかし、まだまだ「小沢信者」は多い。民主党衆院議員305人のうち64人が小沢と行動を共にして離党すれば、民主党は過半数割れして、政権崩壊の危機に瀕する。菅も岡田もこれに怖じ気づいているから、言動のすべてが恐る恐るなのだ。

 したがって、小沢自らの離党はおろか、執行部による除名も、将来小沢忌避ムードが圧倒的になれば可能にしても、現段階では「夢」でしかない。それではどういう対応があり得るかだが、国会が動くのがベストだろう。小沢は検察審査会が起訴を議決した直後に「国会の決定には、いつでも従う」と明言しているのだ。したがって、まず政倫審が動くことだ。政倫審の過去の例を見れば、1996年の加藤紘一招致に始まって、9人の議員が出席しているが、いずれも「疑惑を解消したい」との本人の意思に基づいている。1度だけ例外がある。2009年7月に鳩山由紀夫の個人献金偽装問題について委員の過半数の議決で招致しようとしたが、鳩山はこれを拒否した。制度上拒否できるのだ。小沢も拒否する可能性があるが、政倫審には奥の手もある。国会議員が政治的、道義的に責任があると認めたときは、3分の2の多数で行為規範等の遵守の勧告、一定期間の登院自粛の勧告ができるのだ。登院自粛は厳しい措置である。また衆院での開催が困難なら、まだ一度も開いていない与野党ねじれの参院で開催することも考慮に入れるべきだ。

 政倫審ができなければ、憲法の国政調査権を発動して証人喚問をするしかない。証人喚問の議決は、1955年以降全会一致が原則であるが、多数決で議決されて証人喚問が行われたことも、衆議院では3例、9人がある。この議決は強制力が伴い、証人は拒否できない。野党が多数を占める参院予算委で議決をしても可能となろう。要するに、民主党内事情を考慮すれば、小沢の国会招致は与野党で決めるしかあるまい。場合によっては、議決に当たって民主党が「自由投票」にすれば可能となるケースもあろう。菅がそれくらいの決断をしても罰は当たるまい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会