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2010-10-21 10:36

「平和を守るためのリスク」を国際社会と共有しよう

中山 太郎  研究所客員研究員
 10月20日、ジョセフ・ナイ米ハーバード大教授の講演を聞いた。私にとって特に印象深かったのは、(1)「中国の未来について、2027年には中国は米国を抜いてGDP総額で世界一になるとしているが、それは疑問だ。まして、一人あたりでは、永遠に米国を追い越せない」、(2)「日本社会を取り巻く内向き姿勢の空気に危惧を抱いている。世界は、日本を必要としているのだ。テロ、感染症、環境問題など、日本の力を必要とする項目は多々ある」の2点の指摘だった。

 (1)の中国の未来については、現在の日本は、日清戦争前夜の清国海軍の戦艦「鎮遠」「定遠」の建造におびえた姿に似ていると思う。ナイ教授も、恐怖感からくる紛争について述べていた。中国の姿がおかしいことは、世界が認めているのであるから、日本がまねをする必要はない。かって、中国の最前線で仕事をした人間からいうと、日本人も「世界にはいろいろな人がいるのだ。色々な立場があるのだ」と言うことを分かっていただきたい。「本社社長の中国での表敬先が、3日前だというのにまだ決まらない。日本のホテル、レストランを当日にキャンセルするとは何事か。間に入った日本人担当者の責任だ」などと怒鳴らないようお願いしたい。

 (2)の日本の姿であるが、中国のことを笑えないおかしさを、我が日本も持っているのだ。例えば、湾岸戦争時、総額110億ドルの資金協力を行ったが、国際社会からは、平和回復のために活動している国とは、認められなかった。無神経な日本人が、ある酒の入った場面で「日本人は一人当たり100米ドル拠出した」と豪語した。一人の米国人が、涙ながらにその日本人の胸ポケットに100ドル紙幣をねじ込みながら「金だけでなく、人的協力もよろしく」と述べた。あとから別な人から聞くと、その米国人のご子息は、戦死されたのだ。

 日本の国会は、後方支援を行う目的の国際平和協力法案をもつぶしたのだった。現場の仕事では、アメリカの傲慢さ、ヨーロッパの狡猾さを多々感じることが多いが、彼らは少なくとも「平和を守るためのリスク」を国際社会と共有するという一点では、きちんと筋を通している。「危ないところには行かない平和主義」を考え直す時が来ていると思う。
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