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2010-10-05 07:37

“小沢危機”を背負い込んだ民主党

杉浦 正章  政治評論家
 小沢一郎強制起訴への民主党政権の対応を見ていると、小沢の政治生命の危機だけでなく、自らの政権の危機であるという意識がまるでない。焦点は、小沢を抱えて政権を維持し、統一地方選挙や解散・総選挙を乗り切れるのか、という一点に尽きる。小沢の自発的辞任や野党とマスコミの批判の盛り上がりを待っているのだろうか。そうであれば、民主党自体がマスコミと野党の攻勢をまともに受けるだけだ。ここは「小沢切り」に動くべき時なのに、動きは極めて鈍い。東京第5検察審議会もやるものである。9月14日の代表選当日に起訴議決している。なぜかについて百家争鳴の議論があるが、筆者の解釈は簡単だ。小沢が代表に選出されて、首相になった場合の、“圧力回避”のためである。小沢は代表選最中に検察審を「素人」よばわりし、制度そのものに疑問を呈してきたが、検察審は、小沢が首相になった場合の審議への影響を考えたのだ。「素人」にしては、素早く、かつ適切な判断だった。

 政権の反応の鈍さを象徴するものは、官房長官・仙谷由人の「有罪判決までは推定無罪」発言に尽きる。政治倫理、政治道徳などとんと念頭になく、法律用語を便宜上もてあそんでいる。幹事長・岡田克也も含めて、及び腰なのである。政権幹部は、強制起訴が及ぼす問題の大きさを推定する能力に欠けているようだ。まず小沢を離党勧告や除名処分をしないまま抱えていれば、刑事被告人を擁護する民主党の姿が浮き彫りになる。法廷手続きは起訴までに長くて3か月、初公判までには場合によっては1年近くかかることも予想される。兵庫県明石市の歩道橋事故は、今年1月に検察審の起訴議決があったものの、初公判の期日はいまだに決まっていない。公判が始まれば、一審は本人の出廷が不可欠であり、毎回マスコミが報じて、忘れられるということがない。

 政権が「小沢切り」をしない限り、“おんぶお化け”のように小沢に起因する「政治とカネ」論議が続くのだ。やがて国民は、民主党に自浄能力なしと判断して、政党支持率は低下の一途をたどる。これに内閣支持率も連動する。小沢は、自発的単独離党を即座に否定しているようだが、それでは集団離党で新党結成があり得るかだ。それも小沢戦略にはないだろう。集団離党すれば、菅民主党は公明党や自民党との連立に直ちに動くだろう。小選挙区制の下で政治とカネに汚染されたイメージの「小沢新党」が生き抜ける道はない。

 しかし、政権幹部が「小沢切り」に尻込みしていても、野党の攻勢は避けられない。証人喚問になるかどうかは別として、少なくとも小沢の国会招致では一致するだろう。自民党は議員辞職勧告決議案の国会提出を検討しており、提出されれば民主党議員は“踏み絵”を迫られることになる。決議を契機に民主党が割れる危険があるのだ。かって田中角栄がロッキード事件で起訴されたとき、田中は「今後は体力の3分の1を裁判、3分の1を政治、3分の1を人生に費やす」と漏らしていたが、この話を小沢も知っているだろう。田中の真似をして「闇将軍」を狙いたいのだろうが、政治家のスケールが違っており、もうこれ以上政界汚濁の印象を振りまくのはやめた方がいい。離党どころか、議員辞職を決断すべき時だ。
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