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2010-09-30 07:31

中国の覇権主義にどのように対抗するか

杉浦 正章  政治評論家
 9月29日は、日中共同声明が首相・田中角栄と中国首相・周恩来の間で調印され、国交が回復した記念すべき日である。38年前の同声明は、アジア太平洋における覇権禁止を強調するものでもあったが、尖閣事件で中国が示した対応は、膨張主義国家の覇権主義そのものだ。その特徴は、相手の弱点を見極め、露骨に突く「人質」作戦にある。レアアース輸出制限、ゼネコン社員拘束がそれだ。対抗するにはアラブ産油国が石油を人質に取った石油危機の際と同様の手段しかない。輸入先の分散、代替品の開発だ。そして何より大切のは、共産党一党独裁下の全体主義的国家への過度な経済依存の回避と、逆手を取った中国の覇権追及の実態の世界への発信であろう。日中共同声明は「両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する」と高らかにうたったが、現実はどうか。

 当時の中国は、10億の国民を食べさせてゆくのがやっとの、まさに発展途上国の初歩の段階といってよく、日本の資本・技術は垂涎の的であった。その後石油資源と絡んで尖閣諸島の領有権を主張し始めるが、改革開放で資本主義化をめざすトウ小平は、尖閣より日本の資本・技術力導入を優先させ、「賢明なる次世代」に問題を棚上げした。まさに賢明なる選択だった。日本はトウ小平路線に安心して、安価な労働力を求めて中国に政財界挙げて全面協力。「あれよ、あれよ」という間に中国を世界第2の経済大国に押し上げる手伝いをした。経済で勢いづいた中国が取った路線は、およそ大国としての自制にかけるものであった。海軍力増強による南シナ海、東シナ海への覇権拡大を選択したのだ。まさに「隴(ろう)を得て、蜀(しょく)を望む」の伝統的膨張主義だ。その象徴が尖閣事件となって東シナ海でも露呈した。

 しかし、フィリピンやインドネシアに対する覇権行動と違って、対日行動には誤算があった。それは経済上の人質事件と文字通りの人質事件の2つを引き起こしたことだ。まぎれもないレアアースの輸出制限は、世界中に緊張を走らせ、米国企業が休止していた鉱山での採掘を再開。オーストラリア企業は生産能力を倍増して、生産を再開する。日本企業は数年前から過度の中国産レアアースへの依存の危険性が指摘されており、対策を練っていた。世界有数の埋蔵量を誇るカザフスタンでは、住友商事が参加して採掘・生産を本格的に再開することとなった。日本は代替製品の開発も急いでいる。こうした動きを「まずい」と見たのか、中国側は軟化の兆しを見せている。一国だけによる経済制裁は利かないことがようやく分かったのかも知れない。しかし、いちど牙をむき出しにした印象は消えることはあるまい。また覇権主義を転換させることもない。のど元過ぎれば、熱さ忘れるは、日本の常だが、中国が一党独裁の全体主義国家であることは、肝に銘じておく必要がある。

 日本企業はこれまで惜しみなくと言ってもよいほど、科学技術、鉱工業生産技術、エネルギー・環境技術などの分野で、中国の技術開発の推進力の役割を果たしてきた。雇用面における中国への貢献も著しいものがある。しかし、中国はまぎれもない覇権主義に徹しており、財界は企業防衛の上からも、ひさしを貸し続けると、母屋を取られることを知るべきだ。中国は活動家へのノーベル平和賞授与に関して、ノルウェーにまで圧力をかける国となった。経済力の増大で政治・外交路線を増長させているのだ。尖閣事件を機に、政府は世界に向けて中国の覇権主義を訴え、覇権主義の代償が何であるかを中国に知らしめることが急務だ。官邸も外務省もプロパガンダでは中国に完敗している実態をどうにかせねばなるまい。
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