国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-08-09 12:23

米ロ接近が世界に及ぼす影響

岡崎研究所  シンクタンク
 6月7日付け『The National Interest』誌で、同誌編集主任で米海軍大学教授の Nikolas K. Gvosdev が、7月初旬のクリントン長官のグルジア、ウクライナ、アルメニア、アゼルバイジャン、ポーランド歴訪について論評しています。それによると「オバマ政権は、ロシア周辺諸国に対してブッシュ時代のような拡張政策はとらないが、支援は維持して、これらの国がロシアからの独立性を守るのを支える政策をとろうとしている。オバマ政権はこれまでも、米ロ首脳会談のあとはバイデン副大統領等をロシア周辺諸国に送り、これらの国が米ロ関係改善に猜疑心を持たないよう慰撫してきたが、今回は、バイデンがイラク問題で忙しいため、クリントンにその役割が回ってきたのだ」と言っています。

 オバマ政権は発足当初から、ブッシュ時代のような拡張政策(民主主義と市場経済の性急な押しつけ、NATOの拡張)は取らないことを明らかにしており、また、先日のスパイ事件でロシア側が報復せずに「スパイ」交換で手打ちをしたことは、メドベジェフ大統領も対米関係改善にコミットしていることを示しています。もっとも、リセット政策で米ロの方針が完全に一致することはないでしょう。ロシアが米国にあまりに癒着すれば、軍や諜報機関等のロシアのエスタブリッシュメントの存在意義が大きく失われてしまうからです。また、2012年の大統領選挙でプーチンが返り咲けば、ロシア側の政策が変わる可能性があります。

 それでも、このリセット政策は以下の影響を世界に及ぼすことになるでしょう。すなわち、(1)NATOの存在意義がますます問われることになる。ただNATOに加盟しているバルト諸国や東欧諸国にとってはロシアの脅威は現実のものなので、NATOが崩壊することはない。(2)米ロ関係改善が進んでいる中で、中国は米国の台湾への兵器供与以来、米国への固い態度を崩さず、世界の中で中国がやや浮き上がった存在に見え始めている、(3)ロシアは極東における対中バランスを改善する必要をますます感じる一方、米国もメキシコ湾の原油流出事件もあって、ロシア極東・シベリア開発に関心を示すようになるだろう。

 そうした中で、日本の対ロ関係については、次のことが言えるでしょう。すなわち、アジアにおけるロシアのプレゼンス強化を、米国が政治・経済両面において後押ししてくるようになれば、「アジアへのロシアの参入」を日本が認めてやるかどうかを、北方領土問題解決促進のカードとすることは難しくなります。また、普天間問題で米国に借りを作っている今、日本はこの面でも米国を頼りにはしにくいでしょう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会