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2010-07-08 01:11

親中反米路線の影に垣間見えるどす黒い負の情念

河東 哲夫  元公務員
 この頃安全保障関係のセミナーに出ると、「アメリカはもう落ち目だ。日本は、中国との冷戦思考的な対立を止め、中国との同盟でやっていけばいいじゃないか」という声が高まってきたのを感ずる。そりゃ、戦前日本の映画王・梅屋庄吉が「日中手を携えて、西側の植民地主義勢力と闘う」ために、今なら数千億円に及ぶかもしれない援助を孫文にしたことを思うと、「そうだな、そういうやり方もあったのだな」とは思う。だがそれでも、「本当にそれでいいのか」と思う。

 アヘン戦争以来の屈辱を晴らさんものと、西側への輸出で稼いだカネを軍備につぎ込み、南シナ海や黄海での支配権を確立せんとしているのは、中国なのだ。「遅れてやってきた国民国家」とでも言おうか?
とかく高姿勢でアグレッシブに見えるアメリカ人に比べて、中国人はものわかりが良く見える。だが中国は、公安警察が共産党の支配を力で支える、日本とは異質の社会だ。今の日本の若者は、そのような社会には耐えられないだろう。それに、米軍が日本から撤退して何が起きるかというと、尖閣列島はもちろん、沖縄、種子島、奄美大島あたりまで、次々に「中国の歴史的版図」だとして、中国に取り上げられていくかもしれない。

 「これからは中国。米国はもう落ち目」というのは、中国企業の株価をつりあげて儲けようとする欧米投資会社の宣伝に影響され過ぎているのではないか? 中国が日本の貿易相手ナンバー1? そりゃ、数字ではそうだ。だが日本から中国に輸出した部品、半製品は中国で組み立てられ、そのうちかなりは米国市場に輸出されているのだ。これを足せば、米国は日本製品の最終仕向け先としては、今でもナンバーワンだろう。

 「中国でいいじゃないか」という日本に底流する声は、幕末の攘夷運動を思わせるどす黒い情念を帯びつつある。このような人たちにとって、これまで日米同盟を司ってきた者たちは、学校時代の優等生であり、今はエリート、支配階級で、あたかも植民地の地元エリートのように、宗主国におもねっては利権を貪ってきた存在に見えるのだろう。そして「アンチ・エリート」は、中国を御旗に立てて、親米の旧エリートを追い出し、自ら権力の座につこうとしているのではないだろうか?革命は、人民の名において行われるが、結局は少数の新しい権力者によって私物化される。今のように、日米同盟を基礎として中国とも友好・協力を深めるという路線と、米軍を追い出したあげく、米国市場から締め出され、中国にも足元を見られてムシラレ放題というシナリオと、どちらがいいかの選択は、少数の新しい特権者ではなく、国民全体にやってもらいたい。
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