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2010-06-30 11:12

日本の誤りは、国家と家計の混同に始まる

田村 秀男  ジャーナリスト
 私の拙論は、経済というものは何か、という認識に基づいています。一国の経済とは、マネーが媒介する市場経済である限り、ダイナミックに展開します。たし算、引き算だけで考える家計とは、全く違います。ビジネス活動が示すように、債務(株式、社債、CPや銀行借り入れ)があってこそ事業が拡大し、雇用を増やし、経済全体にダイナミズムが生まれます。国家というものは、経済政策・産業政策・金融政策により、ダイナミズムを充分に発揮させる役割を負っているのです。

 政府は国家権力、即ち徴税権をもち、その権力を背景に中央銀行券というおカネを発行します。日銀券というのは、日銀が発行する借用証で、国家が保証します。国債は政府が発行する利子付き借用証です。つまり一国の経済は、二つの借用証で運営されます。借用証つまり債務を返済するためには、税収という財源を増やす必要があります。この場合、的確な成長のための経済政策と金融政策を政府と日銀が打ち出す重大な責任があります。そうせずに、徴税権にばかり頼り、増税に走るなら、その政府は失格です。増税を見込んだ金融政策を展開するなら、中央銀行は害をなします。

 増税すれば税収が増える、財政がバランスするというのは、家計と国家を混同している考えかたで、財務官僚の発想の原点はそこにあります。マスメディアはどこも、この国家=家計という財務官僚の思い込みをそのまま丸のみにしています。経済オピニオン・リーダーの日経新聞がまさにその代表例で、他紙が追随するのです。世論がそんなキャンペーンに影響され、増税=財政健全化というデマに毒されます。菅直人、仙谷由人のような世論本位主義の政治家が、そこで増税論に飛びつくわけです。自民党など野党の政治家の多くも、五十歩、百歩という感があります。そこで増税案を競い合うという、奇怪な政治現象が起きています。

 そこで思うのは、経済のダイナミズムを見据える正しい理解の欠如であります。世界の主要国では日本だけが欠けています。米欧、中国、インドなど国家システムは違っていても、基本的な経済に関する認識は共通しているはずです。財務官僚の国家=家計論に政治家、メディア、さらには経済学者までが追随する日本のあり様は、極めて異質であり、国民を滅亡と死へと駆り立てる不思議な国です。経済に関する基本的な理解さえあれば、勤勉で創意工夫にあふれる人的資本が活動し、日本は立ち直れるのです。
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