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2010-06-17 07:28

与野党が「消費税増税」に動く意義

杉浦 正章  政治評論家
 首相・菅直人は6月17日に発表する民主党公約の中で「消費税増税の早期導入」を明言する方針だ。既に自民党は税率10%の増税を政権公約に盛り込む方針であり、戦後初めて2大政党が消費税増税を掲げて参院選挙に突入することが確実となった。長期にわたり足の引っ張り合いの種であった消費税増税問題が、危機的な財政状況の中で2大政党を動かし、前向きなスタートを切ることになった意義は大きい。各党とも、戦略的思惑は異にしており、曲折はたどるだろうが、菅は財政再建が歴史的使命と心得て、選挙後に衆院選の時期とは関わりなく、早期導入に踏み切るべきである。

 公約で民主党は「早期に結論を得ることを目指し、消費税を含む税制抜本改革議論を超党派で開始する」と打ち出す。菅の意を受けて増税時期も「衆院選後」と表記しないことになった。同党は、2004年の参院選で「消費税を8%に上げる」と公約したが、2007年の参院選では「消費税率の据え置き」に方針を変更した。今回増税に踏み切った背景には、菅が首相・橋本龍太郎以来の財務相経験者である事も大きく作用している。菅は財務相就任以来、消費税増税に前向きな発言を繰り返している。きっかけは2月の主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)であったとされる。ギリシャの財政危機とも関連して欧米の出席者から「日本のギリシャ化」など厳しい見方が出され、強い印象を受けたと言われる。以後、菅は財政健全化法や新規国債枠を44.3兆円以下にとどめることなど、財政規律回復に踏み出している。首相になってからは超党派の「財政健全化検討会議」構想を打ち出し、野党とも責任分担する形で財政再建に取り組む姿勢を見せた。

 一方自民党の公約は、(1)新施策に恒久財源を義務付ける財政健全化責任法を制定する、(2)消費税率を「当面10%」に引き上げる方針を打ち出すだ。野党は共産、社民両党をのぞけば、おおむね条件付き導入是認の方向である。この結果、冒頭指摘したように戦後最大の財政危機を背景に、消費税増税の流れが極めて強いものとなってきた形だ。自民党は、菅の超党派会議構想自体については「民主党はマニフェストの誤りを認め、陳謝することが先決」(総裁・谷垣禎一)と、選挙戦術に利用する構えである。しかし太筆書きで展望するならば、「与野党消費税増税に動く」と言ってもよい情勢展開だろう。

 参院選での不利を承知で、菅が増税導入路線を打ち出す背景には、「交差点みんなで渡れば怖くない」という選挙戦術があることも確かだ。しかし、過去の例を見ても、3%から5%への消費税増税を決定したのは社会党の村山政権であり、橋本政権はタイミング悪くそれを実行に移して、失墜のきっかけを作ったのである。菅は検討の過程で「衆院選後」としていた実施時期についても改め、「超党派での合意」を前提に、早期に税制改革に踏み切りたい構えといわれる。いずれにせよ政党の大勢が消費税増税に動き出したと言うことで、今回の参院選は画期的な様相を呈することとなる。今後紆余曲折はもちろんたどるだろう。結局衆院選後に実現となる可能性も高い。しかしNHKの調査でも、菅の超党派での取り組みを「評価できる」とする回答が74%に達しており、貧困層救済を併せ導入すれば、消費税増税がかってない軌道に乗り始める気配を濃くしているのは確かだ。
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