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2010-06-09 19:26

(連載)金正日の「崩壊カード」に手を焼く中国(1)

田村 秀男  ジャーナリスト
 韓国の哨戒艦「天安」が黄海上で北朝鮮の魚雷により沈没した事件を受け、韓国に続いて米国、日本も独自の制裁強化に向け検討しているが、肝心の中国は煮え切らないでいる。「中国までが経済制裁に同調すれば、北朝鮮は崩壊するぞ」という「崩壊カード」を将軍様金正日が切っているためで、中国は北朝鮮をひたすら養い続けるしかないようだ。

 中国・北朝鮮関係の内実は微妙である。朝鮮戦争(1950年6月25日~1953年7月27日休戦)で、中国共産党は、百万人規模の大軍を「中国人民志願軍」として送り込み、人海戦術をとって数十万人の戦死者を出したが、米軍を主力とする国連軍を北緯38度線以南に押し返した。以来中朝両国は、表向きこそ緊密だが、北朝鮮側は「首領様」こと金日成体制時代に中華思想に対抗する「主体思想」を広めるなど、中国への従属を拒否する態度で一貫してきた。
 
 一方で、中国は近年、経済危機が続く北朝鮮の崩壊を恐れてきた。朝鮮族の自治区がある東北部の吉林省に、大量の難民が中朝国境の鴨緑江を渡って押し寄せる恐れがあるのと、韓国軍と米軍が混乱を静めるために北上してくれば、鴨緑江をはさんで中国人民解放軍と直接向き合う羽目になる。こうした中国の懸念を逆手にとって、金正日総書記は「崩壊カード」をちらつかせ、爆弾テロ、核実験、ミサイル発射などと、国際社会から非難を浴びる行動を繰り返してきた。これに対し、中国側は対北制裁を控え、原油や食料の供給に応じてきた。
 
 5月3日から4日間の金正日総書記の訪中も、「主体思想」そのものである。訪中は当初、3月末か4月初めに予定されていたが、3月26日に「天安」が、当時では、なぞの爆破で沈没したあと、急きょ中止された。改めて設定された訪中では、上海万博を視察するように中国側から促されていたが、金正日は拒否した。中国側は、中国の負担で上海万博会場に北朝鮮館を突貫工事で完成させるほど配慮したが、金正日は上海には寄らず、特別列車で大連、天津、北京を訪問し、北京での「紅楼夢」観劇をキャンセルして、慌ただしく帰国した。金正日自身の健康問題によるとの説もあるが、北京の言いなりになって、中国式の改革開放路線を導入することになるのを拒否したものとも受け取れる。北朝鮮の崩壊を食い止めたい中国は、対北貿易と対北投資を推進するしか、選択肢がない。北朝鮮・羅先港を軸に中朝国境地帯の道路、鉄道、橋などのインフラ整備に乗り出し、中朝間の物流を大幅に拡大させようとしている。(つづく)
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