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2010-06-08 07:41

民主V字回復、自民一転奈落へ

杉浦 正章  政治評論家
 新政権誕生に伴う参院選挙情勢は「小・鳩辞任」と「脱小沢」を好感して、民主党がV字型の回復基調をたどることが確実視される情勢となった。辞任前は、党独自の調査でも、最悪20議席台の惨敗も予想されたが、新政権スタートにより内閣支持率と政党支持率上昇に一歩遅れて、選挙情勢も好転の一途をたどることが予想される。その反動で、自民党をはじめとする野党は、低迷の度合いを深めてゆきそうだ。躍進が予想されたみんなの党も、伸び悩むだろう。世論調査結果を見ても、政党としての民主党への期待がいかに根強いかが分かる。これは愚昧な首相・鳩山由紀夫と疑惑の幹事長・小沢一郎への批判が支持率低下のほぼすべてであり、有権者は民主党そのものへの期待をなお捨てていないことを物語っていいる。その問題点が除去されれば、民主党への期待の潮目が、元に戻る可能性があるというわけだ。

 首相・菅直人への期待は朝日59%、毎日63%、共同57%と、鳩山の80%前後にまでは及ばないものの、麻生太郎並みにはなってきた。問題の参院比例区での投票政党については、民主が朝日33,毎日34,共同32%で、自民の朝日17,毎日17,共同23%を大きく引き離した。直前までは、拮抗または逆転していたものが、民主は自民の倍近く回復した。みんなの党は朝日が6%から5%へ、毎日が14%から10%にそれぞれ低下した。議席が増えてほしいと思う政党は、NHK調査で民主党が28%、自民党が19%、みんなの党が7%。

 これらの数字が物語るものは、自民党にとって昨年の総選挙前の奈落の淵に再び立たされたことを意味している。攻撃目標が突然眼前から消失したことになり、選挙までの1か月あまりで挽回(ばんかい)するのは、至難の業だ。民主党にしてみれば、希望の太陽が昇りはじめたことを物語る。急カーブで選挙情勢が支持率を追いかける流れだろう。みんなの党は勢いがそがれた感じが濃厚である。焦点は政権発足直後の高揚感がいつまで長続きするかである。参院選挙まであと1か月か、国会を延長して1か月半という状況をどう見るかだが、通常政権発足直後の支持率が下落傾向をたどるまでには数か月がかかる。国会審議も、参院民主党は、高支持率のまま16日に閉幕して、選挙へと逃げ込みをはかりたい構えであり、亀井静香切り捨てになる郵政改革法案廃案もやむなしに傾いている。菅がどう判断するかだ。

 各社の調査で特徴的なのは、浮動票も民主党に戻りつつあることだ。これは、一時は投票先が民主党と拮抗した自民党のみならず、みんなの党にもマイナス効果を生じさせるだろう。与謝野馨や、舛添要一主導の雨後の筍政党に至っては、存在感自体が喪失状態だ。野党は小沢の証人喚問を主張して、支持票を引き戻そうとするだろうが、いまさら「小沢隠し、鳩山隠し」(谷垣禎一)と言っても、訴求力に欠ける。二番煎じでは、新茶の味にはかなわない。菅や幹事長・枝野幸男には欠点も多く、マスコミとの蜜月期間3か月が過ぎるころには、さまざまな批判が生ずるだろうが、当面は前任者が悪すぎた反動で、新鮮味だけを“売り”にできる。人生にも、政党にも、運不運がつきものだが、自民党の運の悪さは、並大抵ではない。「小・鳩体制」存続のままの参院選は夢と消えた。ただ有権者の中には、民主党のマニフェストに象徴される欺瞞(ぎまん)性への不満と警戒心が依然残っており、民主党に昨年の総選挙前のような追い風となるかどうかは疑問がある。
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