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2010-04-06 07:42

民主党は、「正直派」と「虚言派」対決の様相へ

杉浦 正章  政治評論家
 マニフェストをめぐる民主党政権内の論議は、簡単に言えば「正直派」と「虚言派」の戦いだ。「正直派」は、野党時代のマニフェストが財源を無視して有権者の耳に響きの良いばらまき政策であった点を、口には出さぬが、さすがに反省し、修正へと動いている。「虚言派」は 、従来通りのマニフェストで有権者を毛針で2度釣れると思っている、党幹部だ。その構図は、参院選挙を控えて非小沢と親小沢両派の路線上の激突コースをたどっているようだ。こうしたなかで、まだ懲りないのかと思ったのが、4月4日の首相・鳩山由紀夫の発言だ。「地域の主要作物に対して、農家の個別所得保障を同じように導入すべきと思っている。それは必ずやる」と述べ、2011年度からコメ以外の農畜産物にも対象を拡充する考えを強調したのだ。「必ずやる」とは、参院選を控えて「ばらまきマニフェスト至上主義」の鳩山発言の再来だ。

 財源を節約で確保し、天下り郵政人事、暫定税率存続とマニフェストに違反し続けて、国民をだまし、まだ同じ言葉を使う。度し難いとはこのことだ。政権内の論議は、くっきり非小沢と親小沢の2つに分かれ始めた。非小沢の代表格は、国家戦略相・仙谷由人の「こんな予算は、戦争末期に軍事費がふくれあがった時しかなかった」「投資家からみれば、『いつ売り崩してやろうか』と格好のネタになりつつある」という発言。明らかに戦後最大の水膨れ予算を、戦後最大の借金財政で作った、ことへの危機感の表れだ。こうした常識論は、財務相・菅直人はもちろんのこと、小沢お膝元の副幹事長・細野豪志も共有している。細野は4日、「項目に優先順位を付けて、国民に示すのも一つのやり方だ。優先順位が下がる場合、国民におわびしないといけない」と述べている。菅が消費税導入時期の明示をしたくて、うずうずしているのも、発言から手に取るように分かる。

 これに対して、懲りない面々は、まず筆頭が小沢一郎。小沢が「マニフェストは大きく変わるはずはない」と述べれば、腹心の参院議員会長・輿石東は「参院選を戦わなければいけないのに、政権公約の政策を抑制するのか」と、菅にかみつく始末。大きく変わらないという以上、マニフェスト一丁目一番地の子ども手当の満額給付は、実施しようというのであろう。小沢らは、せっかく半額の給付がこれから始まろうとする時期に、公約の旗を降ろす必要はないと判断し、さらなる“ばらまき”の毛針を用意して、参院選対策にしようという腹だろう。つまり来年度からの全額2万6千円の公約も掲げ続けようという方針に見える。「財源などは、政権を取ればかならず出来る」と公言してはばからなかった小沢だが、出来ないことは見事に証明された。財源5.3兆円のめどなど全く立たず、実現はまず困難としか思えない。有権者の眼も、そう度々欺けるものではない。

 読売新聞の調査では、子ども手当を「評価しない」が「評価する」を上回った。有権者は政権担当後の政策遂行の過程は、マニフェスト断念・破棄の過程であったことをよく見据えているし、そのばらまき的虚飾の構図をしっかりと認識してきているのだ。したがって、「正直派」は、財源問題も含めてマニフェストの修正をしなければ、参院選を戦えないという危機感を強く抱いているのだ。再びばらまきに有権者が乗ると思っている小沢ら党幹部とは、消費税問題も含めた路線上の対立へと発展しそうな雲行きである。ここで重要なのは、鳩山の調整能力だが、周知の通りまず期待できない。鳩山は「公約を守れなければ、政権の座を降りる」と総選挙前の党首討論や街頭演説で繰り返し“宣言”しており、修正すれば政権の座を降り、しなければ「虚言」のそしりが繰り返される。まさに股裂きの刑の状態になる。鳩山は子ども手当満額支給断念と消費税導入時期の明示という2大公約違反を断行し、普天間と「政治とカネ」の責任を取って退陣する。それが最後に残された民主党への奉公であろう。それにしてもどんなマニフェストを掲げても、有権者の信用度は昨年の総選挙前の5%くらいしかないのではないか。
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