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2010-03-30 18:58

外国人看護士合格率1%に見るお役所仕事

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 経済連携協定(EPA)に基づいてインドネシアとフィリピンから受け入れた看護士候補者254名が看護士試験を受験。3名が合格したという。この試験の日本人合格率は90%を超えるというから、これをかくも難関にしてしまっているのは、日本語能力だと見るのが至当だろう。新聞報道によれば、来日前に半年間の日本語研修を受けただけで、後は実務の傍らの独学だったらしい。3年間の滞在期間の間に資格取得が出来なければ帰国の途しかないともいう。何ということだろうと思う。

 高齢化社会だ、看護士・介護士不足だという。国民のいのちを大事にする政府のなさりようだとも思われない。少子高齢化が問題だと叫びながら、保育所入所待機児童が巷にあふれているのと軌を一にする。要するに、スローガンと美辞麗句は唱えるものの、それを実行に移そうという真摯さが見られないということだ。挙句の果ては、お役所任せになる。その結果が合格率1%の外国人看護士の誕生だ。

 母国で看護士資格を持っている人が大半だという。ならば、ことが語学能力にある事は明白ではないか。特に看護に当たる人ともなれば、よりきめの細かな語学能力が必要とされる位の事は優秀な官僚でなくとも解る事だ。患者の痛みが、きりきり痛いのか、ずきずき痛いのか、刺すように痛いのか、日常会話だけでも一年や二年でどこまで能力がつくか覚束ないのに、医学用語や深い対話能力まで要求されるとなれば、何をどうしなければならないのか、明らかというものだろう。

 きめの細かい仕事をしようとすれば、オカネがかかる。財政破綻の日本にあって、何もかもというのはないものねだりに過ぎない。一番悪いのは、この外国人看護士制度に見られるような、いい加減な辻褄合わせだ。おカネだけ使って、誰の役にも立っていない。インドネシアの要望が強いからと、外務省が渋る厚労省を押し切ってEPAを結ぶ。やる気もない厚労省が、現実の実行策の責めに当たる。仏を作って魂入れないどころの話ではない。毎年いくらの国費を使っているのかは詳らかにしないが、関係者誰一人満足しないプロジェクトになっている(合格した3人だけは別かな)。「官を開く」だの「未来を開く」だの、歯の浮くような事をいっているよりも、空中戦から地に足の着いた話に、どうつなげてゆくかを見定める事、それを指導力という。
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