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2010-03-26 10:27

日米指導者の最大の差異はなにか?

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 オバマ大統領が政策公約の最重点においていた健康保険制度改定がやっと議会を通過した。オバマ政権の支持率低迷と共に、日本のメディアにも何度も紹介されているから、そのおおよその内容については既にご案内の向きも多いと思う。予定されていた外国訪問日程を延期してまで議会対策に当たる、といういわば異例の取り組みからも、オバマ大統領のこの改革に向けての意気込みは察しられたと言うものだ。この制度改定によって、新たに3千2百万人が保険適用を受けるようになったという。逆に言えば、これまではそれほどの人々が無保険状態にあったという、われわれ日本人の感覚からは信じ難い事態だった訳だ。

 いうまでもなくオバマ大統領以外の歴代民主党大統領もこの問題に取り組んできた訳だが、この40年間、常に失敗に終わってきたのである。その理由としては様々な指摘があるが、最大のものはアメリカ人の政府不信というか、大きな連邦政府の介入に対する拒否反応だろう。これには財政赤字に対する批判(今回改定で向こう10年間に85兆ドルの支出増になるという)も、もちろんあるが、むしろそれ以前に、州政府以外の連邦政府の権限拡大に対する本能的拒絶のほうが大きいように思われる。誠にこの国は United STATES of America なのだ。「合衆国という訳語は正しくない。合州国であるべきだ」といった人がいたが、正しいかもしれない。

 その他に、今回も見られたような立法技術上の問題がある。今回最大の争点になったのは、公費を人工中絶に使うことを認めるか否かという点で、これは玉虫色の決着になったが、これまでの反対論の中にも、いわば森よりも木のほうが大事だという議論は結構多く、単一争点(single issue)を求めるロビーイング・グループや圧力団体の存在がその原点であることは、良く知られている。これに複雑に絡み合ったのが保険会社のロビーイングであったことも周知の事実だった。

 支持率低下、バラまき批判というのは、どこかで聞いたような話だが、太平洋の両岸に見られる最大の差異は、米国では指導者が自らのメッセージを明白かつ率直に述べて、全くブレない、という点だと思う。オバマ大統領が成立を期したのは医療保険制度改革であって、アメリカ国民の生命を大事にする政治ではない。イラクからアフガンへの重点移行、そしてアフガン撤退期日の明確化は、前政権下で成立していた外国との合意事項を一方的に破棄して、内容も定かでないまま 「Trust me」などと、結論を能天気に5月に先延ばしするのとは違う。まして、自分の政権が特定個人抜きではとても自信がないというのか、そんなことはないのか、明言さえ出来ないにいたっては、論外というべきだろう。
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