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2010-02-16 18:18

(連載)東アジアでも「政策共同体」が台頭(1)

進藤 榮一  筑波大学大学院名誉教授
 鳩山首相の国連演説以来、東アジア共同体論がメディアで頻繁に語られ始めた。まさに共同体が、アジア外交劇の舞台に登場したかの感がある。だが舞台の陰には6年有余のトラック2(半官半民)外交の歴史がある現実を見落としてはならない。その歴史が、共同体構築のシナリオを紡ぎ、東アジアに「知の共同体」を形成しつつある。歴史家なら、かつて1970年代中葉に始まる、全欧安保協力会議のためのトラック2が、欧州に「政策共同体」ーー―いわゆるエピステモロジカル・コミュニティー(知識共同体)ーー―をつくり、「ベルリンの壁」崩壊をもたらした近過去を、想起するだろう。
 
 東アジアでトラック2は、アジア通貨危機後「ASEANプラス3(日中韓)」首脳たちが2003年秋発足させたNEAT(東アジア・シンクタンク・ネットワーク)とEAF(東アジア・フォーラム)に端を発する。後者EAFが官財学三者構成をとり年1回の総会に止まるのに対し、前者NEATは、アセアン+3各国にカントリー・コーディネータ(国別代表)をおき、活発な活動を展開している。

 5つのNEAT作業部会が、夫々年2回の政策会議を開くほか、NEAT全体会議が3月に準備会合、8月に総会を開き、共通政策をまとめて、その年の「ASEANプラス3」首脳会議に提言している。開催地は持ち回りで、日本側カントリー・コーディネータ(国別代表)は東アジア共同体評議会(CEAC)が担当している。それにアジア開発銀行研究所(ADBI)やERIA(東アジア経済研究機関)、国際アジア共同体学会などが連携協力している。まさに「政策知」の饗宴が、侃侃愕愕の議論と最先端構想を軸に、東アジア各地で展開され「知の共同体」を形成する仕組みである。
 
 そのNEATの政策現場から見ると、共同体構築過程はいま第2段階に入り始めているようだ。共同体構築がアジア通貨危機に端を発したように、今次の世界金融危機は、トラック2外交に拍車をかけ、地域統合の進化を促し続ける。(つづく)
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