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2010-02-11 10:24

浦木・中山両氏の論述を読んで

易原 俊雄  大学教授
 林語堂の『中国=文化と思想』(鋤柄治郎 講談社学術文庫 1999年)は、中国人による中国人論として興味深いものですが、その「第九章 生活の芸術」において林は、「中国人はたっぷりとある暇とその暇をつぶす楽しみを持っている」と述べ、「中国人は十分な余暇さえあれば、なんでも試みる」とし、「蟹を食べ、お茶を飲み」からはじまって「高鼾を立てる」まで59種類にのぼる暇潰しの方法を挙げていますが、その43番目に「日本人を罵倒し」とあります。

 ですから、居丈高な「反日」に唯々諾々と従うことも、烈火の如く怒り反対することもなく、嗚呼また例の「暇潰し」かと、腹を括って対処する余裕も必要ではなかろうかと思います。いうならば冷静な怒り、です。ところで、この『中国=文化と思想』の原書は、1935年に英語で出版された『MY COUNTRY AND MY PEOPLE』であり、原書では「日本人を罵倒し」の部分がどのように記述されているかは不明です。

 同書は香港の天地図書有限公司から『吾国与吾民』(2005年)の書名で中国語訳されていますが、「日本人を罵倒し」の部分は、「評論政治」となっています。上記の日本語訳では「日本人を罵倒し」の次に、「白人に好奇の目を向け」とありますが、中国語訳では「読仏経(仏教経典を読む)」とあり、「白人に好奇の目を向け」に類似する表現は見当たりません。最後の「高鼾を立てる」も、中国語訳では単に「睡覚(眠る)」にとどまっています。『吾国与吾民』を読む限り、中国人は、「日本人を罵倒」することも、「白人に好奇の目を向ける」ことも、ましてや「高鼾を立てる」ことも、直截に過ぎた表現と反省しているということだと思います。いずれにせよ、「日本人を罵倒」することと「評論政治」、「西洋人に好奇の目を向ける」ことと「「読仏経」とが同じでないことは明らかです。以上、林語堂の『中国=文化と思想』を思い出して、綴ってみました。

 以下、蛇足ですが、この本に述べられた林の“卓説”をいくつか紹介しておきます。
 ■「中国語文法におけるもっとも一般的な動詞活用は、動詞『賄賂を取る』の活用である。『私は賄賂を取る。あなたは賄賂を取る。彼は賄賂を取る。私たちは賄賂を取る。あなたたちは賄賂を取る。彼らは賄賂を取る』であり、この動詞『賄賂を取る』は規則動詞である」
 ■「中国人全員が自分の面子を失わなければ、中国は真の民主主義国家となることはできないのである」
 ■「たとえ共産主義が支配するような大激変が起ころうとも、・・・共産主義が古い伝統を打ち砕くというよりは、むしろ・・・古い伝統が共産主義を粉砕し、その内実を骨抜きにし、共産主義と見分けがつかぬほどまでに変質させてしまうことであろう。そうなることは間違いない」
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