国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-12-21 10:57

アフリカ開発援助は、日本の国益だ!

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 日本のODAが、第二次大戦の「賠償」として始まったという経緯もあり、また、侵略戦争あるいは軍国主義思想に対する罪悪感もあって、自分の考え方を外国に「押し付ける」ことに対して極度に神経質であった。それがODAにおける現地政府からの「要請主義」ということになる訳だが、アフリカにおいてそれがどれほど理想主義、というより非現実的夢想に過ぎないか、ということはお解りいただいていると思う。アフリカの今日の問題点のほぼ全てが、西欧宗主国の植民地経営と奴隷貿易に起因していることを思えば、それにも関わらずやれ「構造調整(SAP)だ」、やれ「民主主義だ」と言い募る西欧論調の厚かましさに較べれば、日本のこの態度はナイーブというか、自虐的というか、とにかくいたいたしいほどに素直である。

 アフリカの貧困はたかがODAごときで解決できるような代物ではない。そんなことは誰でも知っているのに、そこに既得権益が発生する。日本の天下り公益法人と同じように、アフリカに投じられている国際機関を含め多くの国際援助の相当部分(50%に近い、という人もいる)が、アフリカ人ではない高給取りのガイコク人の人件費に消えている。これについて詳論するのは避けるが、その実情がどうであれ、とにかく開発援助というのは、農業における資本の原始蓄積のブースター機能を果たすしかない。これが始まらなければ、この大陸の貧困問題は解決できないことが明らかだからだ。

 そのために必須となる企業(産業セクター)が初期投資採算性の危うさから介入を尻込みするのに代わって、あるいは助っ人として、投資に参加するところにしか、その意味はないというべきだろう。利益率が十分でさえあれば、医療、インフラ等本来公的投資でなされるべき分野でさえ自前でまかなって、企業がアフリカのあちこちに進出しているのは人の知るところだ。TICAD以来、珍しくイニシアティブをとりたがっている日本のアフリカ政策ではあるが、良い意味でも、悪い意味でも、日本の特色であった「官民連携」(あるいは癒着?)が表に出てはいない。ダムや道路を国内に造って、癒着しているよりも、もっと規模の大きい話なように思うが、やはりそちらが甘い汁であるうちは、なかなか軸足が動かないということだろうか。

 なりふりかまわずアフリカ大陸における資源確保に狂奔している中国を見ていると、レアメタルの中国依存に何の危機感も抱いていない日本というのが、まことにお人好しに見えて仕方がない。意識の国際化というのは、小学校から英語を教えるなどという枝葉末節の話ではない筈だ。やれ外需依存ではなく、内需喚起だ、などという紋切り型にうつつを抜かす前に、アフリカにどれほどの可能性があるかを考える方が先ではないか。企業の長期的利益と同じように、クニにとってもenlightened self interestは存在する。アフリカ十億の住民が望んでいるのは、慈善(charity)や緊急援助ではなく、働く場所の確保と産業の成立であることは、東アジアの歴史と何の変わるところもない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会