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2009-12-04 07:43

反米社会主義路線は国民の選択ではない

杉浦正章  政治評論家
 普天間移転先をめぐって反米社会主義路線の弱小政党に、日本の外交安保路線が乗っ取られてしまった形である。これは先の衆院選挙の投票に当たって国民の一人として予想しなかった事態である。すべては政治家としての資質に欠け、状況判断が出来ない首相・鳩山由紀夫の政権担当能力に起因する。普天間基地移転問題は大統領・バラク・オバマへの公約破棄で、おそらく来年の参院選以降に決着を持ち越すことになろう。政策でなく、政局による選択である。米側の対日不信はかってない高まりを見せており、日米関係は、鳩山の言う「深化」どころか、戦後まれに見る「深刻化」の事態に突入する。

 問題は、鳩山が社民党党首の福島瑞穂から連立離脱をほのめかされると、福島を説得する会談をするどころか、まさに渡りに舟とばかりにオバマとの公約を破棄したことである。早期決着に向けて「私を信用して欲しい」とまで言いながら、手のひらを返したと言ってよい。これは鳩山が荒唐無稽(むけい)な普天間飛行場のグアム移転構想を抱いているといわれるのに加えて、背景にパワー・ポリティクスを信条とする小沢の国会対策があった。小沢はひたすら「衆院で再議決、参院で過半数」維持を目指して、憶面もなく社民党、国民新党との関係維持に努めているのである。来年の通常国会でも臨時国会と同じ手法、つまり数に頼った問答無用の強行突破作戦を展開したいに違いない。国会運営は、参院で1議席不足するくらいなら通常与党ペースで進められるものだが、小沢はそれが嫌なのである。とにかく強行突破しか念頭になく、そのためには日米関係などは眼中にない。

 かくして古色蒼然たる反米社会主義路線が衆参でたった12人の小政党により、色濃く展開される羽目となった。オバマがアフガニスタン戦略発表に当たり、主要同盟国で日本だけに連絡してこなかった理由は、明らかに対日けん制の意味合いがあるが、もう一つ理由がある。それは鳩山政権が信頼できないからに他ならない。度重なる首相の信頼喪失発言に加えて、もともと、民主党は日本社会党職員が事務局の主導権を握っている。これらの職員25人を最近内閣官房の専門調査員に押し込んでいる。日本の公安警察が警戒態勢に入っているとも言われる。ただでさえ中国や北朝鮮に情報が筒抜けになりかねない政府の様相である。オバマが軍事機密に属する情報を伝えるわけがない。

 まさに日米同盟関係は、鳩山政権発足以来下降傾向を続け、現在最悪の状況にたどり着きつつある。最大の原因は、冒頭に触れた鳩山の優柔不断にある。官房副長官しか経験のない政治家がいきなり首相としてスポットを浴びるには無理がある。副長官時代も首相・細川護煕から信用されず、「鳩山君はしゃべっちゃうから」と敬遠されていた。その副長官レベルの政治では、この激動期には通用しない。内政・外交に渡る重要発言のすべてがぶれるのは、政治家としての問題掌握能力と決断力がないからだ。軸足が全く定まっていないのだ。これが「日米関係を選択せずに、社民党を選択する」結果を招いてしまったのである。読売新聞が12月4日付の社説で「参院で各5議席ずつしかない社民、国民新の両党に配慮するあまり、画期的な沖縄の基地負担軽減策や日米関係を危うくするのは、避ける必要がある」と指摘するのはもっともだ。朝日新聞ですら「内政上の理由でただ先送りでは、失うものが大きい」と社説を締めくくり、毎日新聞も「問題は、鳩山首相の指導力の欠如である。移設問題の現在の混迷を招いた責任は、鳩山首相にある」と批判的だ。ここにきて親民主党政権のマスコミもほとほと鳩山には手を焼いている感じが濃厚になってきた。
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