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2009-11-27 09:39

中国の後進国進出の意味するもの

岡崎 久彦  岡崎研究所理事長
 11月3日付けの『ニューヨーク・タイムズ』紙上で、スコットランド銀行の中国担当チーフ・エコノミスト Ben Simpfendorfer が「最近の中国の目覚ましい後進国への経済進出は、今後益々大きな影響を世界経済に与えることになろう」と警告しています。

 すなわち、中国では最近、その外貨準備を使って開発途上国のインフラ建設計画に資金援助する、いわゆる中国版「マーシャル・プラン」がしきりに提案されている。これは、過剰な外貨準備をドルだけで持つ危険性を緩和する必要があること、そして国内の過剰投資の結果、中国製品の輸出市場を拡大する必要があることに由来する。実際、中国の後進国向け輸出は、この5年で1900億ドルから6700億ドルに急増しており、その結果、大打撃を受けた後進国産業も多い。また、中国の資金は、中国の得になる分野にだけ流れる傾向がある、こうした中で、中国の国内でも、単に中国製品の輸出市場を拡大するだけでなく、後進国の発展に寄与する援助をしないと、中国のイメージは大幅に悪化しかねないし、援助計画自体、失敗する可能性がある、という意見が出て来ている。その点では、見返りを求めない日本の援助は参考になる、と述べ、金融危機は世界経済を変えたが、後進国に対する中国の行動は、それよりもさらに大きな変化をもたらすことになろう、と結んでいます。

 これは公正客観的な問題点の指摘と言えます。心配なのは、一党独裁国家の中国は、国内の外国企業に対して国家権力による介入・脅迫を行える一方、国外では他の国が到底できないような、採算を度外視した長期的・戦略的投資や企業、資源の買収が出来ることであり、中国が自らその慣行を改めない限り、自由主義国家には、その都度不本意な規制的措置を行う以外に、有効な対抗手段はありません。ただ、長期的には中国も注意しないと危ない要素はあります。東南アジアでは、何十年か毎に現地住民による華僑排斥運動が起こっており、華僑街はその度に灰燼に帰しています。これまで中国人との接触がなかったアフリカでも反華僑感情が高まっていると言われており、アフリカで華人排斥運動が起これば、その結果は、戦慄すべきものになるでしょう。

 また、より短期的な問題としては、中国の安い工業製品の流入で後進国の製造業が脅かされれば、当然輸入制限が起こり、世界経済を縮小させる引き金になりかねないことです。他面、一党独裁国家であるということは、世界経済に死活的影響を及ぼす大問題については、首脳会談で決着をつけることが可能だということでもあります。そうなると、世界経済は益々いわゆるG2体制依存になりますが、日本としては、米国が日本の利益を完全に代表してくれるのであれば、G2は情勢の自然の成り行きとして受け入れるべきでしょう。勿論、その前提として、日米間の信頼関係の維持、強化は当然必要になります。
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